ネット販売だけでも取れる?
“通販酒販免許”の審査ポイントを実務目線で徹底解説**
ネットショップ(EC)でお酒を売りたい——。
最近ではこのような相談が、飲食店・個人事業主・ECサイト運営者から急増しています。
特に多い質問がこちらです。
「店舗を持っていなくても、オンライン販売だけで酒類販売免許は取れますか?」
答えは YES。
国税庁は正式に「通信販売酒類小売業免許」という制度を設けており、
ネット販売のみでも酒類販売免許の取得は可能 です。
しかし、ここには大きな誤解があります。
**結論:通販酒販免許は“取れる”が、審査は決して簡単ではない。
特に保管場所・管理体制・ECサイト表示・財務要件は厳しい**
酒類販売免許は「許可産業」のため、
国税庁は事業者の継続性・健全性を重視して審査 します。
そのため、
「部屋の片隅に置けばいいですよね?」
「サイトは後で作ります」
「赤字でも多分大丈夫ですよね?」
という状態では、ほぼ通りません。
この記事では、実務での申請経験をもとに
通販酒販免許の審査ポイント4つを、誰でもわかるように詳しく解説していきます。
第1章|通販だけで酒類販売免許は本当に取得できる?
結論として、
店舗がなくても許可は取得可能 です。
なぜなら、
通信販売酒類小売業免許は、そもそも以下のような事業者を対象としているからです。
- 自社ECサイトで販売する事業者
- BASE・STORES・Shopify の利用者
- 楽天・Yahoo・Amazonへ出店する企業
- 飲食店がオンライン販売に参入するケース
つまり、対面販売をしない事業者も正式に対象となっています。
よくある誤解①:「店舗がないとダメ」で申請を諦めている人が多い
実際は、店舗よりも 酒類を管理する“保管場所” が重要で、
ここが適切であれば許可は問題なく通ります。
よくある誤解②:「ネット販売は簡単に参入できる」
むしろ、通販酒販免許は
“通常の酒販免許より審査が厳しい”
と言われています。
理由は次の章で解説します。
第2章|審査ポイント①:酒類の“保管場所”(最重要)
通販酒販免許で最も重視されるのが、この 保管場所。
国税庁が求める保管場所の要件は以下の通りです。
① 実在すること(バーチャルオフィスは不可)
具体的には:
- 自宅の一室
- 事務所の一角
- 賃貸倉庫
- 店舗のバックヤード
などが利用できます。
住所だけ借りる“登記専用オフィス”は不可 です。
② 使用権限があること(契約書で証明が必要)
- 賃貸契約書(自分の名義)
- 借主に使用を認められた誓約書
- 所有権証明(持ち家の場合)
が必要です。
③ 倉庫として適正な構造であること
保管場所は、以下の点をクリアする必要があります:
- 床が土間でない
- 鍵をかけられる
- 常温で品質低下しない酒類であること
- 他の物と混ざらないよう棚で区分できる
- 温度管理が必要な酒類なら冷蔵設備を用意
不許可の典型例
- 自宅の押し入れを保管場所にしたい
→ 区分性が弱く不許可 - オフィスの一角(共用部)を使いたい
→ 使用権限が曖昧 - コワーキングスペースの棚を保管場所にしたい
→ 鍵がかからないため不適格
この“保管場所”が整っていないと、どれだけ計画が優れていても許可は降りません。
第3章|審査ポイント②:酒類の“管理体制”の実効性
酒類販売免許の審査では、
「適切に管理できるか?」
が非常に重視されます。
① 帳簿管理の体制
国税庁は、厳格に帳簿管理を求めています:
- 仕入帳
- 売上帳
- 在庫帳
- 種類ごとの分類
- 酒税負担の明確化
帳簿の付け方が誤っていると、
申請前に是正を求められる場合もあります。
② 年齢確認の仕組み(通販では特に重要)
- カート内での年齢確認チェック
- 本人確認(免許証アップロードなど)
- 商品到着時の年齢確認(宅配業者の協力)
飲食店の店頭販売よりも オンラインのほうが厳しい と言われます。
③ 不適切な販売方法は不許可
次のような行為は免許取得後も禁止されています:
- メルカリ等フリマアプリでの酒類販売
- 海外発送(別途手続き必要)
- 他人が販売する酒の代理販売(委託販売)
- 未成年者が購入できてしまうサイト設計
第4章|審査ポイント③:ECサイトの“酒類表示義務”
通販酒販免許で見落とされやすいのが、
「ECサイトの記載内容」 です。
申請時点で、ほぼ完成形のサイトが求められます。
サイトに必要な表示
- 販売所の所在地
- 事業者名
- 酒類販売責任者の氏名
- 未成年者飲酒禁止の文言
- 取り扱う酒類の種類
- アルコール度数表示
- 特定商取引法に基づく表記
これらが揃っていないと、審査は進みません。
“免許番号”の表示は許可後でOK
ただし、免許番号の表示だけは、
許可後に追記すれば問題ありません。
第5章|審査ポイント④:財務要件(納税能力のチェック)
国税庁が酒類販売免許を審査する理由は、
酒税という国税を確実に納めてもらうため です。
したがって、次の点がチェックされます。
① 赤字続きは不利になることがある
単年赤字でも問題ないケースはありますが、
債務超過・著しい赤字 は不利になります。
② 税金の滞納は即アウト
住民税や国民健康保険税の滞納でも影響があります。
③ 財務が弱くても「小規模計画」であればOKなケースも
- 自宅倉庫
- 小規模EC販売
- 低コスト運営
このような堅実な計画であれば、
財務的なハードルは低めです。
第6章|通販酒販免許の申請フロー(実務ベース)
実際の申請フローは次の通りです。
① 保管場所の確保(最優先)
必要なら棚や冷蔵設備の設置も行う。
② 販売方法・扱う酒類の確定
ビール、清酒、リキュール…など。
③ ECサイトの準備
申請時点で“ほぼ完成”していることが望ましい。
④ 書類作成
- 帳簿書式
- 運営体制
- 保管場所の図面
- 事業計画
- 経歴書
⑤ 税務署(国税局)へ提出
審査期間:2〜3か月
⑥ 免許交付 → 販売開始
第7章|行政書士に依頼するメリット
通販酒販免許は、一般の方が思っているより難しい申請です。
行政書士に依頼するメリットは次の通り。
① 保管場所が“適格かどうか”を事前チェック
不適格な場所で準備を進めてしまうと、
最悪の場合 やり直し になります。
② ECサイトの表示を専門家がチェック
サイトの不備で申請が止まるケースは非常に多い。
③ 帳簿・記録管理の体制構築をサポート
酒税法は帳簿管理が厳しいため、
この部分の支援は大きな価値があります。
④ 財務内容に不安がある場合も対策可能
実際に、「赤字だから絶対無理」ではありません。
**まとめ|通販だけでも酒類販売免許は取得可能
ただし、想像以上に“実務的な審査”が行われる**
本記事で紹介したように、
通信販売酒類小売業免許の取得には、
次の4つが必須です。
【許可取得の4つのポイント】
① 保管場所(使用権限・設備・区分)
② 適切な管理体制(帳簿・年齢確認)
③ ECサイトの酒類表示義務
④ 財務要件(継続性・納税能力)
どれか1つ欠けても、許可は降りません。
しかし逆に、これらをしっかり整えれば、
店舗なし・ネット販売のみでも許可を取得できます。
行政書士高見裕樹事務所(石川県)
ECショップ・飲食店のオンライン参入を
“確実に成功させる”ための酒類販売免許サポートを行っています。
☎ 076-203-9314
https://takami-gs.com/contact/