“経営業務管理責任者がいない”は本当にアウト?
建設業許可を通す4つの代替ルートを行政書士が徹底解説**
建設業許可の相談のなかで最も多い質問が、
「経営業務管理責任者(経管)がいないのですが、許可は取れますか?」
というものです。
一人親方として10年、20年と現場で仕事をしてきたにもかかわらず、
「役員経験がない」「個人事業の期間にカウントされない」などの理由で、
建設業許可が取得できないと誤解している方は非常に多いです。
しかし結論から言えば——
**結論:経管がいない = 即アウトではない
4つの代替ルートで許可取得は十分可能**
建設業許可の審査は、
“経管という役職がいないこと”ではなく、
“建設業の経営経験をどう証明するか” が問われます。
そのため、正しいルートさえ選べば、
経管がいない会社でも許可取得は可能です。
【4つの代替ルート】
① 経営業務の「補佐経験」を使う(最も現実的)
② 外部から経管経験者を役員として迎える
③ 親族等の経営経験を活用する
④ 新しい経管候補を“実務補佐”として育成する
この記事では、
それぞれのルートがどんな会社に向いているのか、
どんな書類が必要なのか、
審査で指摘されやすい点はどこなのか、
行政書士としての実務経験をもとに詳しく解説します。
第1章|そもそも「経営業務管理責任者」とは何か?
建設業許可の申請では、
「建設業の経営経験がある者」を会社の中に置いておく必要があります。
これが 経営業務管理責任者(経管) です。
経管に求められる経験年数(基本ルール)
- 法人の常勤役員として建設業の経営を5年以上
- 個人事業主として建設業の経営を5年以上
これが一般的な基準です。
しかし、この条件に合致する人材が会社にいるケースは少なく、
特に法人化したばかりの小規模建設業者は、
ほぼ全員が“経管がいない”状態からスタートします。
**第2章|なぜ「経管がいない」と言われるのか?
よくある5つのパターン**
① 一人親方で長年やってきたが、「経営」と判断されない
材料仕入れ・外注管理をしていても、
税務上の分類や請負形態によっては「経営経験」と認められない場合があります。
② 個人事業の屋号が建設業と認められない
便利屋・清掃業・非建設系の名目だった場合、
建設業の経営経験とみなされない。
③ 法人役員の経験が1〜2年しかない
5年に満たないと基本要件はクリアできない。
④ 家族経営だが、役割分担の証拠がない
妻や息子が手伝っていても、証拠がなければ経管にはできない。
⑤ 社長が職人すぎて「経営業務」が証明できない
「現場一筋で経営は奥さん」というパターンも多い。
しかし、これらの問題は多くの場合
代替ルートでクリアできるため、
経管がいないからといって諦める必要はありません。
第3章|ルート①:経営業務の“補佐経験”で通す(最も有効)
2020年の制度改正で、
経営業務の「補佐経験」でも経管要件を満たせるようになりました。
● 補佐経験とは?
建設会社で 5年以上勤務し、経営をサポートしていた経験。
役員である必要はなく、一般従業員でもOK。
● 補佐経験として認められる業務例
- 契約書作成の補助
- 見積作成の補助
- 現場管理・工程管理
- 発注先との交渉
- 経理・請求業務
- 労務管理のサポート
● 証明書類の例
- 在職証明書
- 社会保険加入記録
- 給与明細
- 職務内容証明書
- 工事台帳・契約書の一部
● このルートのメリット
- 現場職人でも可能性が大きい
- 以前勤めていた建設会社に協力を依頼できる
- 経管経験者がいない会社でも内部で完結できる
補佐経験は、近年もっとも使われている実務的ルートであり、
許可取得の成功率が高い 方式です。
第4章|ルート②:外部から“経管経験者”を役員に迎える
急ぎで許可が欲しい会社に多い方法です。
● この方法のポイント
- 建設業経験5年以上の人を役員に迎える
- 非常勤役員でも可能(自治体運用に差あり)
- 名義貸しを避けるため、実際に意思決定に関与させる必要あり
● よく依頼される経管候補者の例
- 定年退職した建設会社の元社長
- 建設業の役員経験者
- 建設会社の幹部OB
● メリット
- 許可取得までの時間が最短
- 書類が整っていれば審査もスムーズ
- 一時的な措置としても活用可能
● 注意点
- 実態のない「名義貸し」は違法
- 経管役員として業務に関与していることを証明できる必要がある
第5章|ルート③:親族の経営経験を利用する
家族経営の多い建設業界では特に有効なルート。
● 使えるケースの例
- 父親が建設業者(廃業済でもOK)
- 兄弟・親族が建設会社の役員
- 親族関係を証明できる戸籍が揃う場合
● メリット
- 外部に依頼する必要がない
- 書類取得も比較的容易
- 小規模事業者が許可を取りやすい
● 注意点
- 親族の経営経験が本当に建設業であること
- 役員登記を正しく行うこと
- 実態の伴った経営業務の関与が必要
第6章|ルート④:新しい経管候補を“実務補佐”として育成する
最も時間はかかりますが、
長期的には最も健全で確実な方法です。
● この方法が適しているケース
- 外部人材を入れたくない
- 自社の若手を育てたい
- 事業承継を見据えている
● 必要期間
- 概ね 5年の補佐経験 が必要
- 経営業務の補助内容を証拠化すること
● メリット
- 組織力が上がる
- 長期的な許可維持が安定
- 経管の退任リスクが小さい
第7章|最速で許可が欲しい会社が選ぶべき組み合わせ
実務的な最短ルートは
【補佐経験 × 外部役員】
この組み合わせにより:
- 審査が通りやすい
- 経歴証明がスムーズ
- 最短で許可が取得できる
というメリットが得られます。
第8章|申請前に準備すべき書類チェックリスト
建設業許可の肝は「証拠」です。
以下を揃えていると審査がスムーズです。
① 経歴の一覧表(年・担当工事・役割)
② 在職証明書
③ 社会保険の加入記録
④ 経営業務の補佐内容を明記した証明書
⑤ 外部役員を迎える場合の議事録・登記書類
⑥ 財務諸表(直前期の決算書)
⑦ 事務所要件の確認資料
第9章|行政書士に依頼するメリット
- 経管の可否を事前診断できる
- 経歴や補佐経験の“証拠化”ができる
- 申請書類を全て代行
- 外部役員を迎える場合の登記手続きも支援
- 不許可リスクの低減
- 許可取得後の維持(決算変更届・更新)もサポート
**まとめ|経管がいなくても建設業許可は取れる
大切なのは“正しいルート選択”**
経営業務管理責任者がいないという理由で
建設業許可を諦める必要はありません。
許可取得の4つの代替ルート
✔ 経営業務の補佐経験
✔ 外部役員の活用
✔ 親族の経営経験の利用
✔ 新たな候補者を育成する
あなたの会社の状況に合わせて最適ルートを選べば、
建設業許可は十分取得できます。
行政書士高見裕樹事務所(石川県)
建設業許可(新規・更新・業種追加)に強い専門事務所です。
経管の可否判断から証拠書類作成、外部役員活用まで
実務に即したサポートを提供しています。
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