用途地域だけ見ても通らない?
金沢市で旅館業許可を取得するための“本当の壁”3つ
(建築基準・消防・住民説明・ホテル条例・まちづくり条例)**
金沢で旅館業(簡易宿所・ゲストハウス・民泊型簡易宿所)を始めたい方から、
毎月多くのご相談をいただきます。
しかし実際には、
「用途地域が旅館業OKと聞いて購入したのに申請ができなかった」
「消防設備だけで300万円以上の工事費が必要と言われて困っている」
「町会から説明会を求められ、開業が止まってしまった」
こうしたケースが後を絶ちません。
旅館業許可は「用途地域がOKであれば取れる」という単純なものではありません。
むしろ、用途地域はただの入口にすぎず、許可の可否を決める要素は別にあります。
この記事では、金沢市で実務を通して見えてくる、
旅館業許可の“本当の壁”3つと、
ホテル条例・まちづくり条例による看板掲出のポイントを、
徹底的にわかりやすく解説します。
**【結論】用途地域だけでは7割が通らない
旅館業許可の本当の壁はこの3つ**
旅館業許可の審査を左右するのは、以下の3つです。
① 建築基準法(既存不適格の罠)
② 消防設備(費用インパクト最大)
③ 住民説明・地域調整(町会対応)
さらに金沢市では、
④ ホテル条例・まちづくり条例による“看板掲出 1.5〜2か月”
という地域独特のハードルが存在します。
用途地域だけを見て判断すると、
工事で数百万円の追加出費
住民調整の不備で営業停止寸前
など、重大なトラブルにつながることがあります。
以下、それぞれのポイントを深く解説します。
第1章|用途地域だけ見ても旅館業は通らない理由
不動産会社から
「この地域は用途地域が旅館業OKですよ」
と言われたから安心…というご相談者が非常に多いのですが、
用途地域は 旅館業の“入口条件”にすぎません。
実際には、以下のような理由で許可が通らないケースが数多くあります。
● 古民家・町家で階段勾配が急すぎてNG
旅館業では一定の階段勾配が必要ですが、
町家では勾配が急で作り直しになることが多い。
● 採光・換気不足で客室にできない
窓が小さい、換気扇がない、
→ この場合は旅館業として使えない部屋になります。
● 区分マンションで管理規約が禁止
「民泊禁止」「短期賃貸禁止」となっているマンションは非常に多い。
● 消防設備の設置が構造的に不可能
古い木造・狭小建物・マンション共用部などで工事できずNG。
つまり
用途地域=旅館業ができる ではない。
用途地域=スタートラインに立てるだけ。
ここを誤解すると、
「買ってから申請できない」
という最悪の結果につながります。
第2章|本当の壁①:建築基準法(既存不適格の罠)
旅館業の審査で最も多い落とし穴が 建築基準法です。
金沢市内の町家・古民家は1950年以前の建物も多く、
法改正前の建物は ほぼ既存不適格 です。
● よく問題になる建築基準ポイント
1. 階段の勾配・幅
旅館業では一定の勾配が必要。
→ 勾配が急だと階段改修が必要で、工事費が高額。
2. 避難経路が確保できない
廊下幅が狭い、扉の開閉方向が逆、
→ これは旅館業で最も多いNG要因。
3. 採光・換気が足りない客室
窓が小さかったり換気扇がなかったりすると客室として使用できません。
4. 窓先空地不足
火災時の避難が確保できず不可。
5. トイレ・洗面数不足
規模に応じて必要数が決まっている。
6. 用途変更が必要なケース
建物用途が「住宅」の場合、
旅館業に必要な用途へ変更することがあります。
● なぜ建築士と行政書士の事前調査が必須なのか?
建築基準の判断は、
行政書士だけでは不可能です。
- 寸法
- 採光計算
- 換気量
- 階段の勾配
- 避難経路図
- 防火区画・天井高
これらは建築士が図面・現地計測を行い
初めて正確に判断できます。
そして、行政書士は
建築基準法 × 旅館業法 × ホテル条例の観点で全体最適を取る役割を担います。
第3章|本当の壁②:消防設備(費用インパクト最大のポイント)
消防設備は、
許可取得において最も費用が読みにくい部分です。
金沢市消防局では、
旅館業に必要な設備の水準が明確に定められています。
● 主に必要な消防設備
1. 自動火災報知設備(自火報)
最も費用が大きくなる部分。
全館連動が必要になる場合は、100〜300万円以上になることも。
2. 誘導灯(非常口表示)
3. 消火器の設置数・位置
4. 避難ハッチ・避難梯子(必要な場合)
● よくあるトラブル
- 木造3階建て → 避難規定で通らない
- 区分マンション → 共用部工事が不可
- 自火報の配線ルート確保が困難
消防だけで物件の可否が決まるケースも多いです。
● 行政書士 × 消防事前相談の重要性
消防署は、
「必要最低限の設備」でクリアできる可能性を示してくれる場合があります。
逆に事前相談をしないと、
“不要な工事”を勧められ数十万円〜数百万円の損失
になることもあります。
第4章|本当の壁③:住民説明・地域調整(町会対応)
金沢市では、旅館業の開業に際して
住民説明会が制度上は義務ではありません。
しかし実務上は
町会から説明会を求められることが非常に多いのが現状です。
● 住民の不安はほぼ共通
- 夜間の出入り
- ゴミ出しマナー
- 騒音
- 外国人宿泊者の対応
- 駐車スペース不足
- 防犯(監視カメラの有無)
説明会の準備が不十分だと、
町会から拒否されて事業が進まないことがあります。
● 行政書士が入るメリット
- 町会長との調整
- 案内文・資料作成
- 当日の説明進行
- 質疑応答の準備
- 苦情発生時の対応フロー提示
- 遠隔オーナーでも対応可能
住民説明会は、旅館業の成功に直結します。
**第5章|金沢市の独自ハードル
ホテル条例・まちづくり条例による看板掲出(1.5〜2か月)**
旅館業許可のスケジュールを最も左右するのが、
看板掲出です。
金沢市では、
ホテル条例・まちづくり条例に基づき、看板掲出が必須です。
● 看板掲出のポイント
- 掲出期間:約1.5〜2か月
- 掲出場所に厳格な基準がある
- 周辺住民が内容を確認する期間
- 意見書が出る可能性がある
- 期間中は事業計画の変更が事実上できない
● “看板の位置が取れない”という事例も多い
- 道路境界からの距離
- 建物前のスペース不足
- 私有地・共有地の問題
看板ひとつでスケジュールが数ヶ月遅れることさえあります。
● 帳場(管理拠点)の要件
金沢市では無人運営は不可。
→ 近隣に帳場を設置する必要があり、
管理会社との調整が欠かせません。
第6章|旅館業許可取得までの流れ(実務ベース)
以下は、実務で最もスムーズな進め方です。
1.物件現地調査(建築・消防・用途地域)
2.金沢市保健所へ事前相談
3.消防署との協議
4.町会長への挨拶・説明会(必要な場合)
5.ホテル条例・まちづくり条例による看板掲出(1.5〜2か月)
6.建築工事・消防設備工事
7.申請書類作成
8.現地検査(保健所・消防)
9.旅館業許可
期間の目安
最短:2か月
一般的:3〜6か月
古民家・町家・マンションは、
改修内容しだいで半年以上かかることもあります。
第7章|行政書士に依頼するメリット
● 建築士・施工業者・消防との連携
旅館業許可は、行政書士1人では完結しません。
建築士・設備業者と連携して初めて全体最適になります。
● 町会との調整・説明会対応
遠方オーナーでも事業を進められる大きなメリット。
● “買ってはいけない物件”を事前に判定できる
許可が通らない物件を避けるだけで、
数百万円の損失を防げます。
● 工事を最小限に抑える行政協議が可能
設備投資を無駄にしない。
**まとめ|用途地域はスタートラインにすぎない
金沢で旅館業をするなら“事前調査”が命**
金沢市で旅館業許可を取得するには、
用途地域だけでは絶対に判断できません。
旅館業許可の本当の壁
- 建築基準法(既存不適格)
- 消防設備(費用インパクト最大)
- 住民説明(町会対応)
- ホテル条例・まちづくり条例(看板掲出 1.5〜2か月)
物件購入前の10分相談で、
数百万円規模の損失を防げることも珍しくありません。
◆ 行政書士高見裕樹事務所(石川県)
旅館業許可・民泊・簡易宿所の事前調査から
行政調整・消防協議・町会説明会・工事段取りまで
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