建設業の法人化で「最も多い誤解」を知っていますか?
建設業者の相談で非常に多いのが、
「個人の建設業許可を、そのまま会社に移せますか?」
という質問です。
実はこれ…
完全に間違っています。
建設業許可は
「法人ごと」「個人ごと」
で付与されるため、
個人の許可を法人へ引き継ぐことはできません。
しかし現場では、
個人事業の実績を使って法人許可を取得する方法や、
法人化の“タイミングとスケジュール”を工夫することで
事実上スムーズに法人成りすることが可能です。
この記事では、
個人事業から株式会社・合同会社へ法人化する際の
正しい手順と失敗しないスケジュール を分かりやすく解説します。
◆ 第1章|まず結論:建設業許可は“個人と法人で別もの”です。
【許可は引き継げない(原則)】
❌ 個人の許可 → 法人へ移行
❌ 個人名義の許可 → 社名変更でOK
❌ 個人許可の名義を会社に変える
これらはすべて不可です。
理由:
建設業許可は
- 許可番号
- 許可主体
- 経管・専技
- 財務基盤
- 営業所
などすべて“主体”(個人 or 法人)ごとに審査されるため。
【正しい理解】
✔ 個人事業と法人は別の事業者として扱われる
→ 許可は別々に必要。
✔ 個人の実績は法人許可に“使える場合がある”
→ 経管・専技の経験として計上可能。
✔ 法人設立後に“新規許可”が必要
→ 個人許可とは別の手続き。
◆ 第2章|法人化のよくある失敗5パターン
❌ ① 個人許可を保ったまま会社を設立してしまう
個人名義で工事 → 会社名義で請求
会社として工事 → 個人許可で営業
これらは“無許可営業”のリスクが非常に高い。
❌ ② 法人の資本金が少なすぎて財産要件を満たせない
建設業許可には
500万円以上の財産的基礎 が必要。
例:資本金100万円 → 不可
❌ ③ 経営業務管理責任者(経管)が法人側で成立しない
個人事業主(代表者)が経管だとしても
法人になると
- 役員としての経験
- 補佐経験
が別途必要。
❌ ④ 専任技術者が法人側で常勤扱いにならない
個人事業の専技 → 法人の専技に自動で移行は不可。
❌ ⑤ 法人成りの時期を誤り、無許可期間が生まれる
個人許可 → 法人設立 → 法人許可取得
この間が“無許可期間”になることもある。
◆ 第3章|失敗しないための“最適スケジュール”
個人から法人に移る際の
最も安全で確実なスケジュールは次の通り。
【STEP1】法人設立(会社を作る)
- 株式会社または合同会社
- 資本金は500万円以上が望ましい
(残高証明でクリアする方法もある)
【STEP2】個人 → 法人の役員に就任
個人事業の代表者が
新会社の代表取締役や取締役になる。
【STEP3】経管・専技要件を法人でも成立させる
個人事業での経験を活用。
● 経管(経営業務管理責任者)
個人事業主として
5年以上建設業を営んでいればOK。
証拠書類:
- 開業届
- 請負契約書
- 工事台帳
- 請求書
● 専任技術者(専技)
個人事業の実務経験で要件を満たせる。
条件:
- 10年以上の実務経験
- または資格(施工管理技士)
- 工事資料の証拠が必須
【STEP4】法人の“新規許可申請”をする
個人許可とは別に、法人として申請。
【STEP5】法人許可の取得完了後、個人事業を廃止する
法人許可が出るまでは
個人許可を維持するのが安全。
【STEP6】必要に応じて元請へ通知
- 名義変更
- 保険切替
- 建退共
- 下請契約名義変更
◆ 第4章|個人の実績は法人許可に使える?→ 正解:使える(条件あり)
個人事業の実績は、
法人許可の 経管・専技の証明 に利用できます。
【経管に使える条件】
- 個人事業主として建設業を営んでいた
- 請負契約書が残っている
- 経理・契約・労務を行っていたことが分かる書類がある
【専技に使える条件】
- 工事実務の証拠書類が十分ある
(契約書・写真・請求書など)
【使えないケース】
- 職人だけで経営部分に関与していなかった
- 証拠書類が極端に少ない
- 名義借りで実態がない
◆ 第5章|法人化の際に“最重要”になる3つの要件
① 経営業務管理責任者(経管)を法人側で立てられるか
法人の代表者が
個人事業で5年以上建設業を行っていれば、
法人側でも経管として立てられます。
② 専任技術者(専技)が常勤で法人に所属しているか
法人許可を取る場合、
専技は法人に所属していなければならない。
NG例:
- 個人事業主の専技が法人に出向扱い
- 誰も法人の社員になっていない
- 給与支払いの実態がない
③ 財産要件(500万円)を満たしているか
法人許可は
個人許可と違い
「資本金の額」が信用度に直結。
銀行残高証明でも良いが、
資本金500万円 が最もスムーズ。
◆ 第6章|法人成りで“絶対に避けるべき”6つのNGパターン
NG① 個人許可のまま法人名義で工事を受注
これは無許可営業になる危険あり。
NG② 法人許可が出る前に個人事業を廃止
空白期間が生まれ、工事ができない。
NG③ 専技が個人事業に残ったまま法人には移籍しない
専技は“法人に常勤”である必要がある。
NG④ 個人の工事資料を紛失している
経管・専技どちらも不成立になる。
NG⑤ 資本金が少なすぎる
100万円・200万円では審査が厳しい。
NG⑥ 県庁への事前相談なしで出してしまう
石川県は特に
「法人化の審査」が細かいため、
必ず事前相談が必要です。
◆ 第7章|当事務所のサポート:法人成り × 建設業許可の専門対応
当事務所は、
法人化に伴う建設業許可を多数扱っています。
● サポート内容
- 法人設立のアドバイス
- 経管・専技の要件確認
- 個人事業の実績整理
- 工事資料の立証
- 県庁との事前相談
- 許可の新規申請
- 個人許可の廃止手続き
- 元請への通知文章作成
● 実績例(石川県)
- 個人 → 株式会社へ法人化し、同時に業種追加
- 個人許可のみ → 法人設立して新規許可取得
- 個人の専技を法人に移管して新規許可
- 個人許可が古く、工事資料が少ないケースにも対応
◆ まとめ:建設業の法人成りは“タイミングと要件調整”がすべて。
法人化は建設業にとって
大きなメリットがあります。
- 信用度アップ
- 元請からの評価向上
- 融資が受けやすくなる
- 従業員採用に有利
しかし、
法人成りの知識を誤ると
“無許可期間” という致命的リスクに直結します。
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行政書士高見裕樹事務所
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