1.はじめに|「ネットだけで酒を売る」には許可が必要
ECサイトやSNS販売の普及により、「お酒をネットで売りたい」という相談が年々増えています。
しかし、お酒を販売するには必ず**税務署の許可(免許)**が必要です。
「実店舗を持たないと取れないのでは?」という誤解も多いですが、
実際にはオフィス+倉庫の管理体制が整っていれば、通販専門でも取得可能です。
この記事では、
- 通販専門で酒類販売免許を取るための条件
- 実際の審査ポイントと書類作成のコツ
- よくある落とし穴と対策
を、行政書士の実務経験をもとに詳しく紹介します。
2.酒類販売免許の種類を整理
酒類を販売するには、販売形態に応じた免許を選ぶ必要があります。
| 区分 | 販売方法 | 主な用途 | 管轄官庁 |
|---|---|---|---|
| 一般酒類小売業免許 | 店頭販売(対面) | 飲食店・酒販店 | 税務署 |
| 通信販売酒類小売業免許 | 通販・ECサイト販売 | ネットショップ | 税務署 |
| 酒類卸売業免許 | 他の酒販業者への販売 | 業務用 | 税務署 |
この記事で取り上げるのは、通信販売酒類小売業免許(いわゆる「通販酒販免許」)です。
3.通信販売酒類小売業免許とは?
「通信販売酒類小売業免許」は、ネット上で注文を受け、宅配等で消費者にお酒を販売するための免許です。
Amazonや楽天、BASE、STORESなどを利用する個人事業主でも取得できます。
✅ 通販免許でできること
- 自社サイト・モールサイトで酒類販売
- 全国の顧客への配送販売
- 実店舗を持たずにEC専業運営
⚠️ できないこと
- 店頭での販売(来店対応)
- 自家製酒の販売(製造免許が別途必要)
- 許可外の第三者販売(代理販売・転売)
4.「実店舗なし」でも取得できる条件
実店舗がなくても、次の要件を満たせば免許を取得できます。
(1)管理拠点が明確であること
- 自宅やオフィスなど、事務所として使用できる場所を確保
- そこに販売責任者・帳簿管理者を配置
- 税務署が実在確認できる体制であること(写真提出あり)
(2)在庫保管場所(倉庫)があること
- お酒を実際に保管する場所(自社倉庫・委託倉庫)を明示
- 委託倉庫を利用する場合は「倉庫使用契約書」を添付
- 使用権限(賃貸借・登記など)を明確にする
(3)通販サイトの運営実態があること
- 自社ECサイト、またはモール出店ページを準備
- 販売方法・注文受付・支払方法を明記
- サイトURLを印刷して申請書に添付
5.所在地(事務所・倉庫)の要件と実例
税務署は「営業の実態」を重視します。
したがって、所在地の扱い方が非常に重要です。
| 形態 | 認められる例 | ポイント |
|---|---|---|
| 自宅兼事務所 | 書類保管棚・業務机・PC設置がある | 生活空間と区分 |
| 賃貸オフィス | 賃貸借契約書で権限を証明 | 看板設置・出入口写真 |
| 倉庫併設 | 保管棚・温度管理体制あり | 在庫写真が必要 |
| 倉庫委託 | 委託契約書+責任範囲明記 | 管理権限を明確に |
📸 提出時には「外観・入口・室内・保管棚」の写真を添付します。
6.管理体制の審査ポイント
税務署が最も重視するのが販売管理体制です。
具体的には、申請書添付の「販売管理概要書」に次の内容を記載します。
記載例:
当社は、石川県金沢市○○町の事務所にて酒類販売管理者を常駐させ、
受注は自社ECサイトにて受付。注文データは在庫管理ソフトで自動連携。
倉庫(△△ロジスティクス倉庫)より出荷し、責任者がダブルチェックを実施。
ここでのポイントは、
- 誰が在庫を管理するのか
- どのように誤出荷を防ぐのか
- 顧客・取引履歴をどこで保管するのか
といった運営実務を具体的に説明することです。
7.通販酒販免許の申請に必要な書類一覧
| 書類名 | 内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| ① 酒類販売業免許申請書 | 申請者情報・販売形態 | 税務署 |
| ② 販売管理概要書 | 管理者・体制・サイトURL | 税務署 |
| ③ 定款・登記簿謄本 | 法人の登記情報 | 税務署 |
| ④ 賃貸借契約書 | 事務所・倉庫の使用権限証明 | 税務署 |
| ⑤ 倉庫委託契約書 | 外部倉庫利用時 | 税務署 |
| ⑥ 販売サイト資料 | トップページ印刷・URL | 税務署 |
| ⑦ 販売予定リスト | 取り扱い酒類・仕入業者一覧 | 税務署 |
| ⑧ 事業計画書 | 売上見込み・資金計画 | 税務署 |
※提出前に、必ず**事前相談(打合せ)**を行うことが推奨されます。
8.審査の流れと期間
| ステップ | 内容 | 所要期間 |
|---|---|---|
| ① 事前相談 | 税務署で概要説明・内容確認 | 約1〜2週間 |
| ② 書類作成・提出 | 行政書士が代行可能 | 約1週間 |
| ③ 税務署審査 | 管理体制・資金力・適格性を確認 | 約2か月 |
| ④ 免許交付 | 問題なければ許可通知 | 約60日前後 |
全体として、申請から交付まで約2〜3か月が目安です。
9.通販免許での販売範囲と制限
| 販売形態 | 通販免許で可能? | 備考 |
|---|---|---|
| 自社ECサイト販売 | ○ | 自社運営サイトで販売可 |
| 楽天・BASE等モール販売 | ○ | 店舗ページ提出必要 |
| SNS販売(Instagramなど) | △ | サイトリンク必須 |
| 店頭販売 | ✕ | 一般免許が別途必要 |
| 酒類卸売 | ✕ | 卸売業免許が別途必要 |
10.免許が取れない主なケース(審査NG事例)
| 事例 | 理由 |
|---|---|
| 管理場所が他人名義 | 使用権限が不明確 |
| 倉庫が登記されていない | 実在確認が取れない |
| サイトが未完成 | 販売実態を確認できない |
| 管理体制が抽象的 | 「誰がどう管理するか」が不明 |
| 資金計画が曖昧 | 継続性に疑義 |
税務署は「経営の安定性」「誠実性」「管理能力」を重視します。
書類の整合性が取れていないと、再提出や不許可のリスクがあります。
11.事業計画書の作成ポイント
通信販売免許では「売上見込み」と「経営の継続性」が重視されます。
したがって、単に「ネットで酒を売ります」では通りません。
書き方のコツ:
- 月間想定売上・仕入金額を明示
- ターゲット顧客・販売チャネルを記載
- 商品ジャンル(ワイン・日本酒・クラフトビール等)を具体的に
- 倉庫・人員・システム体制を図で示す
行政書士が事業計画書をサポートすることで、審査官が理解しやすい構成に整えられます。
12.通販免許と一般酒販免許の違い
| 項目 | 通信販売免許 | 一般酒販免許 |
|---|---|---|
| 販売方法 | ネット販売専用 | 店頭販売 |
| 顧客対象 | 全国の個人消費者 | 来店客 |
| 営業所要件 | オフィス+倉庫 | 店舗・カウンター |
| 免許表示 | 通信販売酒類小売業免許 | 一般酒類小売業免許 |
| 現場検査 | 必要に応じて実施 | 必須 |
13.行政書士に依頼するメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| ✅ 税務署との事前協議を代行 | 審査方針を事前確認して確実に進行 |
| ✅ 管理体制・事業計画書の作成支援 | 審査に通る文章に整える |
| ✅ 倉庫・委託契約書の整備 | 契約内容の整合性を確保 |
| ✅ ECサイト内容の適法性チェック | 特定商取引法・景表法に対応 |
| ✅ 許可取得後の変更届出にも対応 | 倉庫移転や社名変更時も安心 |
14.費用の目安(実務相場)
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 行政書士報酬 | 150,000円〜(税・実費別) |
| 税務署手数料 | 無料 |
| 登記簿・契約書取得実費 | 約2,000〜5,000円程度 |
| 倉庫契約書整備 | 別途見積り |
※実際の内容(事務所・倉庫の数、法人/個人など)により変動します。
15.実例紹介|実店舗なしでも取得成功したケース
石川県金沢市で、ネット通販専門のクラフトビール販売事業を立ち上げたA社様。
実店舗はなく、自社オフィス+委託倉庫で運営。
当事務所が管理体制・事業計画書の作成を支援し、約2か月で無事に免許を取得。
審査時に重視されたのは、在庫管理責任者の明確化と倉庫契約書の整備でした。
16.まとめ|“実店舗なし”でも免許は取れる
✅ 実店舗がなくても取得可能
✅ オフィス+倉庫+ECサイトがあればOK
✅ 書類の整合性・管理体制がポイント
✅ 行政書士による事前相談でスムーズに
📞 通信販売酒類小売業免許のご相談はこちら
行政書士高見裕樹事務所
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