風俗営業・深夜酒類提供との違い|“飲食店営業許可だけ”では足りないケース
― スナック・バー開業時に必要なダブル許可(飲食+風営)を徹底解説 ―
1.はじめに|「飲食店営業許可があれば開業できる」と思っていませんか?
スナックやバーを開業しようとする方の多くが、まず保健所へ「飲食店営業許可」を申請します。
この許可を取れば飲食店として営業を始められますが――実はそれだけでは足りない場合があります。
たとえば、
「お客様の隣に座って会話をする」
「午前0時を過ぎても営業を続ける」
といった営業形態を予定している場合は、警察署への申請や届出が別途必要です。
このように、「飲食店営業」と「風俗営業」「深夜酒類提供飲食店」は法律上まったく異なる扱いを受けます。
この記事では、スナック・バー開業時に混同されがちな3つの許可の違いを、実務経験に基づいて詳しく整理します。
2.3つの営業形態の位置づけを整理
スナック・バー・ラウンジなどの店舗を開業する際には、まず次の3区分を理解することが大切です。
| 区分 | 主な根拠法 | 営業の内容 | 管轄先 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業 | 食品衛生法 | 食品・飲料を提供する | 保健所 |
| 風俗営業(1号) | 風営法 | 接待行為を伴う飲食店営業 | 警察署(公安委員会) |
| 深夜酒類提供飲食店 | 風営法第33条 | 接待行為はないが深夜0時〜営業 | 警察署(届出) |
どの許可・届出が必要かは、営業スタイル・営業時間・サービス内容で決まります。
3.「飲食店営業許可」とは?(保健所管轄)
まずすべての飲食店の基本となるのが、「飲食店営業許可」です。
食品衛生法に基づき、厨房や手洗い設備などが基準を満たしているかを保健所が審査します。
✅ 飲食店営業許可でできること
- 食品・アルコール類を提供する
- 飲食代金を受け取る
- 一般的な営業時間内での営業(深夜0時まで)
ただし、接待行為や深夜営業を行う場合はこの許可だけでは不十分です。
4.「接待行為」があると“風俗営業許可”が必要
風俗営業とは、法律上「接待を伴う飲食店営業」のことを指します。
接待とは、お客様をもてなして楽しませる行為をいい、
次のような行為が含まれます。
| 主な接待行為 | 該当例 |
|---|---|
| ① お客様の隣に座る | カウンター越しでなく隣席に着く |
| ② お酌をする | グラスに注ぐ・ドリンクを作る |
| ③ カラオケで一緒に歌う | 盛り上げ目的の同席 |
| ④ 談笑・指名対応 | 顧客の歓楽的雰囲気を高める |
| ⑤ キス・抱擁・接触 | 明確な風俗営業該当行為 |
これらの行為を伴う営業を行う場合、
✅ 飲食店営業許可(保健所)
+
✅ 風俗営業許可(警察署)
のダブル許可が必要です。
5.「深夜酒類提供飲食店届」とは?(深夜0時以降営業)
一方、「接待行為」はないけれど、深夜0時を超えて酒類を提供する店舗は「深夜酒類提供飲食店」に該当します。
例:
- バー(カウンター越しに酒を出すだけ)
- ダイニングバー(接待なし)
- バーテンダー主体のカクテルバー
これらは、午前0時を過ぎて営業する場合、警察署への「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」が必要です。
6.風俗営業と深夜酒類提供は「併用できない」
よくある誤解が、
「風俗営業許可を取って、ついでに深夜も営業したい」
というもの。
しかし、風営法上、
「風俗営業許可を受けた店舗は、深夜0時以降の営業を行ってはならない」
と明確に定められています。
つまり、“風営”と“深夜酒類提供”は併用不可です。
- 接待あり → 風俗営業許可
- 接待なしで深夜営業 → 深夜酒類提供飲食店届
この二択を間違えると、営業停止のリスクがあります。
7.許可・届出の審査期間と流れ
| 区分 | 手続種別 | 審査期間 | 主な審査内容 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 約1週間 | 厨房・衛生設備 |
| 風俗営業許可 | 警察署(公安委員会) | 約55日 | 構造・用途地域・図面・実地調査 |
| 深夜酒類提供飲食店届 | 警察署 | 約10日(届出) | 照度・見通し・営業時間確認 |
風俗営業許可は2か月近くかかるため、開業スケジュールを立てる際には早めの準備が不可欠です。
8.用途地域と店舗構造の制限(風営法の落とし穴)
風俗営業許可を取るには、店舗の所在地と構造にも制限があります。
🔸用途地域の制限(石川県金沢市の場合)
| 用途地域 | 許可可否 |
|---|---|
| 商業地域 | ○ 許可可能 |
| 準商業地域 | ○ 許可可能(条件あり) |
| 近隣商業地域 | △ 要確認 |
| 住宅地・準住居地域 | ✕ 原則不可 |
※ 金沢市では条例により、学校・病院・児童福祉施設などの周囲100m以内は不可。
🔸店舗構造の制限
- 客席の見通しを妨げるパーテーションはNG
- 照度は10ルクス以上(暗すぎると不許可)
- 出入口は1か所に限定、鍵付き個室は不可
これらは「図面審査」で確認され、行政書士が作成した図面に基づき警察が現地を調査します。
9.スナック・バー開業時に必要な「二重手続き」
スナックを開く場合、通常は次の2段階で許可を取得します。
1️⃣ 保健所(飲食店営業許可)
→ 店舗の衛生面・厨房設備を確認。
2️⃣ 警察署(風俗営業許可または深夜酒類提供届)
→ 営業形態・図面・用途地域・照度を確認。
飲食店営業許可を取っても、風営許可がなければ営業開始できません。
10.風営法上の「接待にあたる/あたらない」具体例
| 行為 | 接待に該当? | 解説 |
|---|---|---|
| カウンター越しで会話 | ✕ | 通常の接客 |
| 隣に座る | 〇 | 接待に該当 |
| グラスにお酒を注ぐ | 〇 | お酌行為=接待 |
| カラオケでデュエット | 〇 | 接待目的と判断 |
| 軽い雑談 | ✕ | 一般的接客 |
| 指名制度・同伴 | 〇 | 接待構造あり |
行政庁は営業実態で判断するため、「軽い接客」のつもりでも風営法違反となることがあります。
11.許可取得のタイムライン(モデルケース)
| 日数 | 手続き内容 |
|---|---|
| 1〜7日目 | 店舗物件選定・図面確認(行政書士が用途地域を調査) |
| 8〜15日目 | 保健所に飲食店営業許可申請 |
| 16〜25日目 | 警察署に風俗営業許可申請(または深夜届出) |
| 26〜55日目 | 実地調査・補正・照度測定 |
| 約60日目 | 許可証交付・営業開始可能 |
12.無許可営業のリスク
風俗営業や深夜酒類提供届を出さずに営業した場合、
✅ 営業停止命令
✅ 罰金・刑事罰(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)
✅ 再許可が下りにくくなる
といった重い行政処分を受けます。
特に「知らなかった」では済まされず、行政指導→摘発→処分という流れになるため注意が必要です。
13.行政書士に依頼するメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| ✅ 用途地域の事前確認 | 不許可リスクを防ぐ |
| ✅ 図面作成・照度確認 | 構造基準を満たすよう調整 |
| ✅ 保健所・警察との事前協議 | 同時進行でスピーディー |
| ✅ 住民説明会・周辺調整も対応 | トラブル防止に有効 |
| ✅ 開業後の変更届・管理者変更も一括対応 | 長期運営をサポート |
行政書士高見裕樹事務所では、北陸三県(石川・富山・福井)での風営・深夜営業許可を多数取扱い、実地調査立会・事前相談同行にも対応しています。
14.実例紹介|“スナック開業をスムーズに成功させた事例”
金沢市片町エリアでスナック開業を希望されたお客様。
当初は「飲食店営業許可だけ」で保健所の申請を済ませていましたが、
開業直前に警察署から「風俗営業に該当する」と指摘され、急遽申請を追加。
当事務所が図面・用途地域確認から警察協議まで代行し、約55日後に許可取得。
事前相談がいかに重要かを実感されたケースでした。
15.まとめ|スナック・バー開業は“ダブル許可”を意識する
飲食店営業許可だけでは足りないケース――
それが「接待行為」または「深夜営業」を行う店舗です。
✅ 接待がある → 風俗営業許可(警察署)
✅ 深夜0時以降営業 → 深夜酒類提供飲食店届出(警察署)
✅ どちらもない → 飲食店営業許可のみ(保健所)
どの形態に当てはまるかを正しく判断することが、開業成功の第一歩です。
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