支店を増やすときの届出|宅建業者が支店設置で忘れがちな変更手続き
― 専任者配置・標識掲示・免許番号の更新を徹底解説 ―
1.はじめに|支店展開は「成長の証」でも法的手続きが必須
宅建業を営んでいて、営業拠点を増やしたり、新たに店舗を構えたりすることは、
ビジネスの成長にとって大きな一歩です。
しかし、宅地建物取引業法では、支店を新設・移転・廃止した場合には必ず届出を行う義務があります。
この届出を怠ると、最悪の場合は業務停止処分や免許取消につながることもあります。
特に近年は、不動産広告やインターネット掲載による無届支店の発覚が相次いでおり、
行政庁のチェックも年々厳しくなっています。
この記事では、石川県を中心に多くの宅建業者をサポートしてきた行政書士が、
支店設置時に必要な変更届出の実務ポイントを詳しく解説します。
2.支店設置に関する法的ルールとは?
宅建業法では、次のように定められています。
第5条第3項(宅地建物取引業法)
宅地建物取引業者は、事務所その他の営業所を設置、移転または廃止したときは、
その旨を免許権者に届け出なければならない。
つまり、支店=営業所を設置した時点で必ず届出が必要です。
3.「支店」に該当するのはどんな場所?
「支店」と聞くと立派な店舗をイメージしがちですが、法律上は次のような場所も該当します。
| 該当するケース | 届出が必要 |
|---|---|
| ① 常時人が勤務している営業拠点 | 〇 |
| ② 看板や広告に所在地を明記している事務所 | 〇 |
| ③ 契約締結行為を行う場所 | 〇 |
| ④ 名刺やチラシに記載している営業所 | 〇 |
| ⑤ 他社との共同店舗で自社スペースを持つ場合 | 〇 |
一方、単なる倉庫・保管場所・モデルルームで取引行為をしない場合は、
「支店」には該当しないケースもあります。
4.支店設置届出に必要な主な書類
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 変更届出書 | 支店設置・移転・廃止いずれの場合も提出 |
| 添付書類一覧 | 変更事項に応じて添付(専任者証明など) |
| 専任宅建士証の写し | 新支店に配置する宅建士の資格確認 |
| 雇用契約書または登記簿 | 専任者の常勤性を証明 |
| 事務所案内図・平面図 | 営業実態を確認するため |
| 標識掲示写真 | 支店名義の業者票掲示を証明 |
| 賃貸借契約書写し | テナント入居の場合に必要 |
これらの書類を支店所在地を管轄する都道府県庁または国交省地方整備局へ提出します。
5.支店設置時に必ず必要な「専任宅建士」
本店と同様に、支店にも1名以上の専任宅建士を配置しなければなりません。
この専任宅建士は、支店に常勤していることが条件です。
専任者の配置要件
- 宅地建物取引士証が有効であること
- 支店所在地に常勤していること(ダブルワーク不可)
- 雇用契約書・給与明細などで勤務実態を証明できること
行政庁は、支店設置時にこの専任者の要件を最も厳しくチェックします。
6.標識(業者票)の掲示義務
支店を設けたら、標識(いわゆる業者票)を掲示することが義務付けられています。
標識とは、事務所の入り口などに掲示する「会社概要プレート」です。
掲示内容例:
宅地建物取引業者票
商号:株式会社○○不動産
代表者氏名:○○ ○○
免許証番号:石川県知事(2)第12345号
専任の取引士:△△ △△
免許有効期間:令和5年4月1日~令和10年3月31日
標識を掲示していないと、「無届営業所」とみなされるおそれがあります。
7.免許番号の表示・広告上の注意点
支店開設後は、チラシ・ホームページ・ポータルサイト等の免許番号・専任者名表示も最新に更新する必要があります。
よくあるミス例
- HPに「本店住所のみ記載」→支店情報が抜け落ちている
- ポータルサイト(SUUMO等)で旧免許番号のまま掲載
- 名刺・看板に支店専任者を記載していない
これらの表示漏れは、景品表示法や宅建業法違反に問われることがあります。
8.届出の提出期限は「30日以内」
支店の新設・移転・廃止があった場合は、
30日以内に変更届を提出することが法律で定められています。
| 手続内容 | 提出期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 支店新設 | 設置日から30日以内 | 免許権者(県または国交省) |
| 支店移転 | 移転日から30日以内 | 同上 |
| 支店廃止 | 廃止日から30日以内 | 同上 |
期限を過ぎると、行政からの「指導通知」や「業務改善命令」を受けることがあります。
9.石川県での届出実務の特徴
石川県では、宅建業免許の所管が「県庁 建設産業課」にあります。
支店設置届出の審査では、以下の点が特に厳格にチェックされます。
- 専任宅建士の常勤性(兼任・兼務不可)
- 事務所の使用権限(賃貸契約書確認)
- 標識掲示写真の有無
- 支店所在地が「住居専用地域」に該当しないか
金沢市・白山市・野々市市などでは、用途地域の制限があるため、
住宅地内の支店設置が不可となるケースもあります。
10.支店開設に伴う「関係手続き」も忘れずに
支店を新設する際は、宅建業の届出以外にも関係する手続きが複数あります。
| 手続き | 担当機関 |
|---|---|
| 商業登記の本店所在地変更・支店登記 | 法務局 |
| 税務署への開設届出 | 管轄税務署 |
| 社会保険・労働保険の事業所届 | 年金事務所・労働局 |
| 不動産保証協会への届出 | 保証協会(全日・宅建協会) |
行政書士と司法書士・税理士が連携して行うことで、
書類整合性を保ち、スムーズな審査につながります。
11.支店設置届出の流れ(石川県内の実務)
| ステップ | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| ① 事前相談 | 行政書士が専任者・所在地を確認 | 行政書士 |
| ② 必要書類準備 | 賃貸契約・平面図・専任者証等 | 依頼者+行政書士 |
| ③ 変更届作成 | 届出書・添付書類一式を作成 | 行政書士 |
| ④ 県庁提出 | 建設産業課へ提出・受理 | 行政書士 |
| ⑤ 記録更新 | 業者票・HP・免許番号を更新 | 依頼者 |
通常、書類が整っていれば3〜4営業日で受理完了します。
12.よくある質問(Q&A)
Q1.支店専任者が退職した場合、どうなりますか?
→ 30日以内に新しい専任宅建士を補充し、「専任者変更届」を提出します。補充できない期間は営業停止のリスクがあります。
Q2.モデルルームも支店扱いになりますか?
→ 契約行為や重要事項説明を行う場合は支店扱いとなり、届出が必要です。見学のみなら不要です。
Q3.他県に支店を設ける場合は?
→ 本店所在地の免許権者とは別に、新設県にも「従たる事務所」として届出が必要です。
Q4.代表者が同じでも、別法人で運営する場合は?
→ 別法人は新たな免許が必要になります。
13.支店設置での「よくあるトラブル」
| トラブル事例 | 原因 |
|---|---|
| 専任宅建士の常勤性が認められず差し戻し | 兼務・遠隔勤務 |
| 用途地域が住居専用で不許可 | 立地確認不足 |
| 賃貸借契約が名義貸し状態 | 契約者が他法人 |
| 標識掲示を忘れ行政指導 | 現地確認で発覚 |
こうしたトラブルを防ぐため、行政書士による事前チェックが有効です。
14.行政書士に依頼するメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| ✅ 届出漏れを防げる | 支店・専任者・標識など全体を確認 |
| ✅ 添付書類の整合性を担保 | 登記・契約書・資格証を整理 |
| ✅ 行政窓口との調整を代行 | 石川県・富山県・福井県全域対応 |
| ✅ 登記・税務手続きも一括支援 | 提携専門家による連携対応 |
| ✅ 設立・支店展開の全体戦略をサポート | 組織変更や支店拡大の段階に応じて提案 |
15.まとめ|支店を増やすときは「届出+専任者配置+標識掲示」を忘れずに
支店を新設することは、宅建業者の成長にとって大きな一歩。
しかし、届出を怠ったまま営業を始めると、後々大きなリスクになります。
✅ 支店新設から30日以内に届出
✅ 専任宅建士を常勤配置
✅ 標識掲示・免許番号を更新
この3点を確実に押さえれば、支店開設後のトラブルを防ぐことができます。
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