旅館業と民泊の違いとは?
北陸三県で宿を始める前に知るべき許可と制度の分かれ目
「自宅の一部を宿泊施設にしたい」
「空き家を活用して簡易宿泊所を始めたい」
「金沢や富山、福井で民泊を始めたい」
――そんなご相談が、ここ数年で急増しています。
観光需要の回復とともに、北陸三県でも宿泊業を始める個人・法人が増えていますが、
最初のハードルになるのが「旅館業と民泊の違いが分からない」という点です。
一見どちらも「人を泊める」事業ですが、
実は根拠となる法律・営業日数・設備要件・行政対応がまったく異なります。
この記事では、北陸で宿泊施設を開業する方に向けて、
行政書士高見裕樹事務所が現場で培った経験をもとに、
旅館業と民泊の違い、申請時の注意点、北陸三県での制度差を分かりやすく解説します。
1.まず押さえておきたい:旅館業と民泊の「法律の違い」
宿泊施設を運営するには、以下のいずれかの法律に基づいて許可または届出を行う必要があります。
| 区分 | 根拠法 | 許可/届出 | 対応する宿泊形態 |
|---|---|---|---|
| 旅館業 | 旅館業法 | 許可制 | ホテル・旅館・簡易宿泊所など |
| 民泊 | 住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法) | 届出制 | 自宅や空き家などの短期貸し |
この2つの制度の最大の違いは、
営業できる日数と、設備・構造基準の厳しさにあります。
旅館業(特に簡易宿泊所)は、通年営業が可能な「本格的な宿泊施設」。
一方、民泊は「住宅を活用した副業的・短期的な宿泊事業」に位置づけられています。
2.営業日数の違い:「180日ルール」とは?
民泊(住宅宿泊事業法)では、
法律上「年間180日以内の営業」という制限があります。
つまり、1年のうち半分しか営業できません。
365日フル稼働させたい場合は、**旅館業許可(簡易宿泊所)**が必要になります。
| 区分 | 営業日数 | 対象 |
|---|---|---|
| 旅館業 | 制限なし(通年営業可) | ホテル・ゲストハウス・簡易宿泊所 |
| 民泊 | 年180日以内 | 自宅や空き家の短期貸し |
北陸三県では、雪の影響で冬期の稼働が落ちやすいため、
「年180日でも十分」という方もいますが、
観光地(金沢・白川郷・黒部)では、通年営業できる旅館業許可の取得が主流です。
3.旅館業の種類と「簡易宿泊所」という選択肢
旅館業法では、営業形態ごとに4種類の区分があります。
| 種類 | 主な施設 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 旅館営業 | 温泉旅館・旅館 | 客室が複数・和式中心 |
| ② ホテル営業 | ビジネスホテル・観光ホテル | 洋式構造・個室タイプ |
| ③ 簡易宿泊所営業 | ゲストハウス・民宿・ドミトリー | 相部屋・低料金・小規模 |
| ④ 下宿営業 | 学生・長期滞在向け | 月単位で貸すタイプ |
この中で、個人の空き家・マンション・古民家を使った宿が該当するのが「簡易宿泊所」です。
北陸では、築古住宅や町家の再生型宿泊施設が増えており、
「簡易宿泊所許可」が最も現実的な選択肢になっています。
4.設備・構造基準の違い
旅館業許可(簡易宿泊所)と民泊の最大の違いは、設備基準の厳しさです。
| 項目 | 簡易宿泊所(旅館業法) | 民泊(住宅宿泊事業法) |
|---|---|---|
| 客室面積 | 1室あたり7㎡以上(複数人宿泊は1人あたり3.3㎡追加) | 明確な規定なし(住宅基準を満たせば可) |
| 玄関・廊下 | 共同利用可能 | 住宅構造で可 |
| トイレ | 男女別または複数個必要 | 1戸に1か所あれば可 |
| 浴室 | 共用または個室設置 | 住宅用浴室で可 |
| 換気・採光 | 基準あり | 住宅基準に準拠 |
| 避難経路 | 非常口・避難経路の確保義務 | 原則必要なし(消防基準適用外も多い) |
旅館業の許可を取るためには、構造・衛生・消防のすべての基準をクリアする必要があります。
そのため、申請前の設計段階から専門家による確認が必須です。
5.北陸三県の運用の違い
北陸三県では、同じ「旅館業法」でも保健所・条例による運用差があります。
| 地域 | 特徴 |
|---|---|
| 石川県(金沢市・加賀市) | 観光地では簡易宿泊所申請が多く、図面・トイレ・洗面の配置に厳格。金沢市では看板掲示義務あり(申請後約1〜2か月間)。 |
| 富山県(富山市・高岡市) | 「用途地域」や「駐車場確保」に関する指導が細かい。民泊より簡易宿泊所が主流。 |
| 福井県(福井市・あわら市) | 温泉地を中心に「旅館営業」が多い。民泊は市街地限定で、年間営業制限により利用者少なめ。 |
北陸は地域により担当課の解釈が異なるため、
どこで申請するかによって審査基準が変わる点に注意が必要です。
6.民泊を選ぶメリット・デメリット
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 許可ハードル | 届出制で比較的簡単 | 年180日以内の制限 |
| 費用 | 安価(行政書士報酬10万円前後) | 設備・衛生面の基準緩和により信用が低いことも |
| 立地 | 住宅地でも営業可(一定条件) | 近隣苦情対応が必要 |
| 事業性 | 副業・季節営業に最適 | 本格的な収益化は困難 |
副業的に「自宅の一部を貸したい」「週末だけ稼働したい」場合は民泊でも問題ありません。
しかし、「年間を通して運営したい」「複数棟展開したい」「外国人観光客を受け入れたい」場合は、
**旅館業許可(簡易宿泊所)**が適しています。
7.許可までの期間と流れ
旅館業(簡易宿泊所)
- 図面・構造確認(行政書士+設計者)
- 消防設備設置・消防検査
- 保健所への事前相談
- 旅館業法申請 → 検査 → 許可
⏱ 所要期間:約1.5〜2か月
民泊(住宅宿泊事業法)
- 届出書作成
- 必要書類(登記・間取り図・誓約書等)添付
- 住宅宿泊事業者登録
⏱ 所要期間:約2〜4週間
8.許可取得の費用目安(北陸三県)
| 区分 | 行政書士報酬 | 図面作成費 | 行政手数料 | 合計目安 |
|——|—————-|—————|————-|
| 旅館業(簡易宿泊所) | 110,000〜165,000円 | 55,000円 | 約20,000円 | 約200,000円前後 |
| 民泊(住宅宿泊事業法) | 77,000円〜 | 不要〜33,000円 | 無料 | 約100,000円前後 |
※物件の状態や改装有無によって変動します。
9.民泊から旅館業へ切り替えるケースも増加
当初は「民泊」で始めた方でも、
「想定より予約が入る」「稼働率を上げたい」と考え、
途中で旅館業許可(簡易宿泊所)へ切り替えるケースが増えています。
切り替え時は、「消防法令適合通知書」「図面変更」「申請書再作成」が必要です。
既存の建物を活かしつつ、収益型に発展させる流れとして有効です。
10.行政書士に依頼するメリット
旅館業・民泊の申請は、
複数の機関(保健所・消防・建築指導課・都市計画課)をまたぐため、
書類の整合性や行政間の調整が重要になります。
行政書士に依頼することで:
- 書類作成・図面整理・現地確認を代行
- 各機関との調整を一括対応
- 物件調査から許可取得までの期間を短縮
行政書士高見裕樹事務所では、
**「不動産 × 許認可 × リフォーム」**の強みを活かし、
物件探しから内装工事、旅館業・民泊許可までをワンストップでサポートしています。
11.北陸で宿を開業するなら──“準備がすべて”
旅館業も民泊も、「始めたあとに修正できる部分」は限られています。
最初の設計段階で、どちらの制度で進めるかを決めることが重要です。
当事務所では、
- 立地・物件・建築構造の確認
- 許可区分の診断(旅館業/民泊)
- 事業計画の作成支援(収益モデル化)
まで、開業前から伴走支援いたします。
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行政書士高見裕樹事務所
北陸三県対応|不動産 × 許認可のスペシャリスト
📍所在地:石川県金沢市
📞 電話:076-203-9314
✉️ お問い合わせフォーム:https://takami-gs.com/contact/
👉 「旅館業と民泊のどちらで始めるべきか分からない」
そんな段階からでも大丈夫です。
物件の立地・構造を確認し、最適な申請方法をご提案いたします。