
“自分で書ける遺言”|自筆証書遺言のメリットとリスク管理
1. はじめに
「遺言は作っておいたほうがいい」と分かっていても、実際には作らずに亡くなる方が多くいます。
その背景には「お金をかけたくない」「自分で簡単に済ませたい」という気持ちがあります。
そんな方に選ばれているのが 自筆証書遺言 です。
費用をほとんどかけずに、自分で作成できるのが最大の魅力です。
ただし、自筆証書遺言には 無効リスクや紛失リスク があることも忘れてはいけません。
この記事では、自筆証書遺言の仕組みやメリット・デメリット、法改正によって導入された「法務局保管制度」、行政書士ができるサポートについて詳しく解説します。
2. 自筆証書遺言とは?
2-1. 制度の概要
自筆証書遺言とは、本人が自分で全文を手書きして作成する遺言です。
民法に基づき、次のような要件を満たさなければ無効になります。
- 遺言者が全文を自書すること
- 日付を明記すること
- 署名・押印をすること
2-2. 財産目録の特例
2019年の法改正で、財産目録については自書でなくてもよくなりました。
- 不動産の登記事項証明書のコピー
- 預金通帳のコピー
- パソコンで作成した一覧表
などを添付しても有効です。
3. 自筆証書遺言のメリット
- 費用がほとんどかからない
- 思い立ったらすぐに作成できる
- 自分だけで内容を決められる
- 秘密に作成できる
4. 自筆証書遺言のデメリット
- 形式不備で無効になるリスク
- 家庭裁判所の検認手続きが必要
- 紛失・偽造・改ざんのリスク
- 内容が不明確だと相続トラブルにつながる
5. 法務局による自筆証書遺言保管制度
2020年から「自筆証書遺言保管制度」が始まりました。
これは、作成した自筆証書遺言を 法務局で預かってもらえる制度 です。
5-1. 利用の流れ
- 自筆証書遺言を作成
- 予約をして法務局に出向く
- 本人確認を受け、遺言を提出
- 法務局が保管し、相続開始後に相続人が閲覧可能
5-2. 利用のメリット
- 紛失・改ざんを防止できる
- 家庭裁判所の検認が不要になる
- 登録情報を全国の法務局で確認できる
6. 公正証書遺言との比較
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
---|---|---|
作成方法 | 本人が全文を手書き | 公証人が作成 |
費用 | 無料(保管制度は3,900円) | 財産額に応じて数万円〜 |
保管 | 自宅または法務局 | 公証役場 |
検認 | 原則必要 | 不要 |
無効リスク | 高い | 低い |
利用者層 | 少額財産・簡単な分け方 | 不動産や相続人多数のケース |
7. 実際にトラブルになった事例
7-1. 日付が抜けていた
→ 無効となり、相続人間で争いに
7-2. 財産の記載があいまい
→ 「銀行の預金を長男に」とだけ書かれていたため、どの銀行か不明で紛争化
7-3. 保管中に紛失
→ 相続人が見つけられず、遺言が存在しなかったものとして相続開始
8. 行政書士ができるサポート
- 遺言内容の整理(誰に・何を渡したいのか)
- 財産目録の作成サポート
- 自筆証書遺言の書き方アドバイス
- 法務局保管制度の申請支援
- 公正証書遺言との比較提案
行政書士に相談することで「無効にならない遺言」を残せます。
9. 石川県での実務傾向
石川県(金沢市・白山市・野々市市など)では、まず自筆証書遺言を作成し、重要性が高い財産だけ公正証書遺言で残す「ハイブリッド型」を選ぶ方もいます。
- 「費用を抑えたい」
- 「ひとまず形にしたい」
- 「法務局で預けたい」
といったニーズが強いです。
10. 実例紹介
10-1. 金沢市の60代男性
- 預金だけのシンプルな相続
- 自筆証書遺言を作成し、法務局に預ける
- 家庭裁判所の検認不要でスムーズに相続開始
10-2. 野々市市の70代女性
- 複数の子どもがいて、土地の分け方に不安
- 行政書士に相談し、公正証書遺言を勧められる
- 結果として自筆証書+公正証書の併用に
11. まとめ
- 自筆証書遺言は「安く・手軽に作れる」遺言の方法。
- ただし、無効や紛失のリスクがあるため、法務局保管制度の利用がおすすめ。
- 複雑な相続は公正証書遺言のほうが安心。
- 行政書士は、遺言の書き方から制度選びまで幅広くサポート可能。
✅ お問い合わせ先
行政書士高見裕樹事務所
電話:076-203-9314
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