
【2棟目・3棟目の壁はどこに?】
簡易宿所の多店舗展開と旅館業許可に必要な管理体制のつくり方
はじめに|簡易宿所を「複数展開」するとき、最初の許可とは全く違う視点が必要です
Airbnbなどの民泊市場拡大や、古民家再生・空き家活用の流れの中で、「宿泊施設の多店舗展開」に挑戦する事業者が増えています。
・1棟目で簡易宿所の許可を取得して運営は軌道に乗った
・2棟目・3棟目の物件も確保できた
・立地も良く、需要もあるはず──
それでも、2棟目以降の許可取得でつまずく事業者が後を絶ちません。
なぜか?
それは、旅館業許可には「施設」だけでなく「運営体制」全体が審査対象になるからです。
本記事では、簡易宿所の多店舗展開を検討している事業者様に向けて、
「どこでつまずくのか?」「どうすれば複数許可を通せるのか?」を、行政書士の実務視点から詳しく解説します。
1棟目と2棟目以降では、審査の視点が変わる
最初の1棟目では、比較的スムーズに許可が取れたとしても、2棟目以降になると保健所・建築課・消防などの対応が一気に厳しくなることがあります。
その理由は、「施設の構造基準」はクリアしても、「運営体制の継続性」が疑問視されやすいからです。
よくある審査官の懸念
- 「複数棟を、1人の管理者で本当に回せるのか?」
- 「緊急時に、すぐ駆けつけられる距離・体制か?」
- 「既存施設との混同やトラブルが起きないよう、管理簿などは整備されているか?」
- 「実質的には放置状態になっていないか?」
つまり、物件数を増やす=人的・設備的な管理体制を増強していないと、許可が通らないのです。
管理者の「常駐要件」──何をもって“常駐”と判断されるのか?
旅館業法上、簡易宿所であっても「営業者または管理者の常駐」が原則求められています。
しかし、「常駐」とは何を意味するのかは、明確な定義がありません。
実務では次のような基準が見られます:
✅ 常駐と認められやすい要件
- 施設内または近隣(徒歩圏)に管理者が1日中常駐している
- 管理者の居住実態や勤務シフトが提示できる
- 緊急時連絡先が施設内に掲示されている
- チェックイン対応を現地で対面で行うか、施設内で即時対応可能な体制がある
✅ 問題視されやすいパターン
- 管理者が1人しかおらず、複数施設を遠隔対応している
- 自宅からの電話対応のみ(施設との距離が遠い)
- チェックインが完全セルフで、顔が見える対応がない
- 実際には無人状態に近いのに、常駐と申告している
では、どうすれば多店舗展開でも許可が下りるのか?
① 各施設ごとに「管理責任者」を設定する
複数施設がある場合は、それぞれの施設に管理者を明確に配置しましょう。
たとえ同一法人・同一営業者でも、1施設=1管理者体制が基本です。
人員が確保できない場合でも、「日中はA氏」「夜間はB氏」というシフト体制を示すことで許可が通るケースもあります。
② 緊急対応マニュアル・体制を整備する
施設で火災・急病・騒音などが発生した際の対応フローを明文化し、
- 24時間対応の電話番号
- 管理者の携帯番号
- 最寄り消防署・警察署・病院の情報掲示
- AEDや初期消火器の設置
などを整備しておくことで、「緊急時も適切な対応が可能」と評価されます。
③ 「連絡ノート」「管理簿」など記録の整備
複数施設を運営する場合、管理の実態を記録で証明できるようにしましょう。
- 日々の清掃記録
- チェックイン・アウト時間の記録
- 管理者の勤務シフト表
- 不具合や苦情対応履歴
これらを提出できると、許可後のトラブル予防にもなります。
「距離」が問題になることもある
実務上、「別施設まで車で30分以上かかる」ような場合、
「それは常駐とは言えないのでは?」と指摘されることがあります。
特に都市部ではなく地方自治体ほど、“緊急時の物理的対応の速さ”を重視される傾向があります。
✅ 対策例
- 「1つのエリアに集約して複数展開する」
- 「管理拠点(シェアオフィス等)を中間地点に設ける」
- 「エリアごとにスタッフを分散配置」
許可後も続く「報告・変更義務」
旅館業許可は取ったら終わりではありません。複数施設を運営していると、以下のような変更や届出が発生します。
- 管理者変更届
- 間取りの変更(軽微変更届 or 再申請)
- 営業停止・休止・廃止届
- 名義変更・法人代表変更届
- 看板表示・営業標識の更新義務
多店舗展開をするからこそ、こうした運用面の届出を「ルール化」しておく必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q:無人チェックインでも多店舗展開できますか?
→ できます。ただし、管理者の連絡体制や現地対応能力を補完する資料(遠隔モニタリング、緊急対応業者との契約など)が必要です。
Q:法人代表者が全施設の管理者を兼任できますか?
→ できなくはないですが、物理的な移動距離・対応能力が審査対象となるため、施設が複数県にまたがるなどの場合は不可とされやすいです。
Q:各施設で旅館業許可を別々に取らないといけませんか?
→ はい。**「1施設=1許可」**が原則です。
同じ会社・同じ営業者であっても、施設が異なれば別申請となります。
当事務所ができるサポート
行政書士高見裕樹事務所では、北陸三県(石川・富山・福井)において
簡易宿所・旅館業許可の多店舗展開支援を多数実績としております。
✅ サポート内容
- 各施設ごとの許可申請書類作成
- 管理体制構築・マニュアル作成支援
- 消防・保健所との事前相談代行
- 建築士・施工会社との連携(図面・用途変更対応)
- 営業開始後の変更届・運営サポート
おわりに|“複数展開できる体制”を先に設計することがカギ
1棟目でうまくいったとしても、2棟目・3棟目は同じ感覚では通らない──
それが旅館業許可の現実です。
施設の立地や構造も重要ですが、許可を出す側が一番見ているのは、**「事故なく安全に運営できる管理体制かどうか」**です。
「設計」「人員配置」「書類整備」すべてを一体として準備することで、
複数展開が可能となるだけでなく、トラブルを未然に防げる運営にもつながります。
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