旅館業の審査で“最もつまずく”のは、消防です。
旅館業許可の相談を受ける際、
建築基準法と並び、ほぼ確実に問題となるのが「消防」。
- 「感知器が足りないと言われた」
- 「避難経路が1方向しかない」
- 「排煙設備がないから通らないと言われた」
- 「誘導灯が必要と言われ追加費用が…」
こんな声が非常に多いです。
旅館業(簡易宿泊所)は、
宿泊者の生命に関わるため、
住宅とは比較にならないほど消防の基準が厳しい のです。
この記事では、
旅館業許可で消防がNGになる典型例、
金沢市の審査基準、
そして最短で許可を取るための最適ステップを解説します。
◆ 第1章|旅館業で必要な消防設備の基礎知識
旅館業では、
住宅用火災警報器(住宅用感知器)だけでは不十分です。
消防法では、
宿泊施設は「特定防火対象物」と呼ばれ、
多くの消防設備が必要になります。
【旅館業で必要な主な消防設備】
① 自動火災報知設備(自火報)
- 受信機
- 感知器(熱・煙)
- 発信機
- 警報ベル
1階だけなど部分免除のケースもあるが、
ほぼ必須。
② 誘導灯(避難口誘導灯・通路誘導灯)
- 避難の方向を示す照明。
- 住宅には通常ない設備。
③ 消火器
- 本数・配置・型式が厳格に決まる。
- 古い消火器はNG(10年目安)。
④ 非常照明
- 停電時にも光る照明。
- 階段・廊下に必要。
⑤ 排煙設備
- 排煙窓
- 排煙機
- 機械式・自然式の選択
採光窓と兼ねることも可能。
⑥ 避難器具(必要に応じて)
- はしご
- ロープ
- 救助袋
2階建で避難経路が不足する場合に求められる。
◆ 第2章|消防がNGになる典型例(トップ10)
金沢市の実務でも頻発している“消防NG”パターンをまとめます。
❌ NG1:感知器の種類・位置が間違っている
“住宅用火災警報器(電池式)”
= 旅館業では 使えません。
必要なのは:
- 連動型
- 有線
- 自動火災報知設備(自火報)
また、感知器配置も厳しい。
❌ NG2:避難経路が1方向しかない
避難経路は 2方向 必要。
町家・古民家・細長い住宅は
ここでほぼ100%引っかかります。
❌ NG3:排煙設備が不足している
消防では、
排煙設備の有無が非常に重要。
- 排煙窓の大きさ
- 高さ
- 排煙経路
が基準未満の場合NG。
❌ NG4:誘導灯が設置されていない
住宅にはほぼ存在しないため、
追加工事が必要。
❌ NG5:非常照明が一定距離ごとにない
特に廊下・階段でNGが出る。
❌ NG6:2階の救助経路が確保されていない
2階建の簡易宿泊所では、
- 避難ハッチ
- 救助袋
- はしご
などを求められることがある。
❌ NG7:感知器の設置間隔・死角がある
- 小上がり
- ロフト
- 小部屋
- 天井形状が複雑な住宅
ここでは“死角”が発生しやすい。
❌ NG8:消防設備図が不正確(手書き・寸法なし)
消防設備士が作成した図面が必要。
❌ NG9:建築図面と消防図面が不一致
窓の位置、壁の厚みがズレていると即NG。
❌ NG10:消防の事前相談をしていない
旅館業許可は
建築 → 消防 → 保健所 の順で審査される。
消防が通らない
= 旅館業許可は絶対に取れない。
◆ 第3章|金沢市の消防審査の特徴(他地域より“厳しめ”)
金沢市の消防は、
観光地で旅館業が多いため審査経験が豊富。
そのため:
- 図面が粗いとすぐ差し戻し
- 排煙設備に特に厳しい
- 木造住宅の避難経路は非常に厳格
- 古民家は“既存不適格”の扱いに慎重
- 通路幅・階段幅を細かく確認
- 感知器の種類も厳格に指定
という傾向があります。
特に町家・古民家宿で難易度が上がる。
◆ 第4章|消防との“最適な進め方”を徹底解説
【旅館業許可は、まず“消防”に相談すべき。】
これは非常に重要です。
建築より先に消防を入れると破綻します。
しかし、消防を“無視して”進めるともっと危険です。
正しい順番はこれ:
🔹 STEP1:建築基準法チェック(建築士)
→ 採光・換気・避難経路・排煙を確認
→ 建築面でNGがないか最初に判定
🔹 STEP2:消防事前相談(消防署)
→ 使用用途(簡易宿所)
→ 収容人数
→ 必要な設備の確認
→ 配置図の確認
🔹 STEP3:消防設備士による図面作成
→ 感知器・誘導灯・非常照明
→ 消火器配置
→ 排煙の位置関係
→ 建築図面との整合性を取る
🔹 STEP4:消防本提出 → 現地検査
→ 設置状況
→ 配線・設備
→ 避難経路
→ 表示板の確認
🔹 STEP5:保健所検査 → 旅館業許可交付
◆ 第5章|消防設備の“義務早見表”(簡易宿泊所)
【木造2階建(100㎡未満)の場合】
- 自火報:必要
- 誘導灯:必要
- 非常照明:必要
- 消火器:必要
- 排煙設備:客室により必要
- 避難器具:必要な場合あり
【鉄骨造・RC造の場合】
基準はさらに厳しくなる。
【収容人数10人以上の場合】
一気に設備が増えるため、
建築士・消防設備士の連携が必須。
◆ 第6章|消防工事の費用感(参考)
金沢市での実務ベース。
● 感知器増設:5万〜20万円
(有線/無線/自火報の規模により変動)
● 誘導灯:1台 3万〜7万円
● 非常照明:1台 2万〜6万円
● 消火器:1本 5,000〜2万円
● 排煙窓改修:10万〜50万円
● 自火報一式:20万〜100万円以上
🔥 設備費だけで50万〜150万円になることも珍しくありません。
◆ 第7章|消防NGで実際にあったトラブル事例(石川県)
事例①:感知器が住宅用でNG → すべて付け替え
費用:約35万円
→ 申請2ヶ月遅延
事例②:排煙設備がない町家 → 排煙窓の新設が必要
→ 建築部分に工事が入り、用途変更へ
→ 許可まで4ヶ月
事例③:避難経路を確保できず → 客室を減らす
→ 売上計画が大幅に変更
事例④:誘導灯の位置が不適切 → 再工事
→ 配線やり直しで10万円追加
◆ 第8章|当事務所の強み:消防で“落ちない設計”を最初から組む
● 行政書士 × 消防設備士 × 建築士の三位一体の体制
最初から消防を見据えて設計。
● 金沢市の消防署ごとの“審査の癖”を熟知
署によって指摘内容が異なるため、
最初の段階で調整。
● 古民家・町家宿の消防に強い
排煙・避難経路の確保が難しい物件でも対応。
● 消防設備工事の金額感を事前に提示
追加工事のリスクを最小化。
◆ まとめ:旅館業許可は、消防で決まる。最初に相談するのが成功の近道。
旅館業許可は
「建築 × 消防 × 保健所」
の三段構成ですが、
一番つまずくのは消防 です。
- 感知器
- 排煙
- 避難経路
- 誘導灯
- 非常照明
これらは一つでも欠けると
旅館業許可は絶対に通りません。
旅館業の計画が決まったら、
最初の段階で消防と専門家に相談することが
成功の最短ルートです。
◆ お問い合わせはこちら
行政書士高見裕樹事務所
〒921-8147
石川県金沢市額谷3丁目2番地 和峰ビル1階北
TEL:076-203-9314
お問い合わせフォーム:https://takami-gs.com/contact/