旅館業許可は“図面の出来栄え”で80%決まります。
旅館業許可や簡易宿泊所の申請で、
最も多くの事業者がつまずくのは 図面 です。
- 「消防から“図面が粗い”と言われた」
- 「建築指導課に出したら“情報不足で判断不能”と返された」
- 「間取りだけ書いた簡易図面では通らなかった」
という相談が後を絶ちません。
旅館業の図面は、
建築士レベルの精度が必要です。
しかも、旅館業は提出先が3つあり、
それぞれ必要な図面が異なります。
【旅館業許可の図面提出先(3つ)】
- 建築指導課(建築基準法)
- 消防署(消防法)
- 保健所(旅館業法)
この記事では、
各機関に必要な図面、求められる精度、
よくあるNGパターンを
金沢市の実務にあわせて徹底解説します。
◆ 第1章|旅館業で必要な図面は“最低でも10〜20種類”あります
旅館業許可や用途変更では、
単なる平面図やラフ図面では絶対に通りません。
【提出必須の図面一覧(建築・消防・保健所をすべて含む)】
① 平面図(現況・計画)※最重要
- 各部屋の名称
- 寸法
- 窓・ドアの位置
- トイレ・浴室・洗面
- 厨房(あれば)
- 客室の面積
- 廊下幅
- 避難経路
② 立面図
建物の外観と高さを確認するため。
③ 断面図
階高・天井高さ・換気経路を確認するため。
④ 面積表
- 客室面積
- トイレ・浴室面積
- 共用部面積
- 延べ床面積
- 用途別面積
建築指導課で最も見られる資料。
⑤ 換気計算書・採光計算書
旅館業は住宅より厳しい。
NG例:
- 小窓だけで採光不足
- 換気量が足りない
- 機械換気の記載なし
⑥ 避難経路図
- 客室から避難口までの距離
- 2方向避難の確保
- 屋外への動線
避難経路は消防との整合も必要。
⑦ 防火区画図・内装制限図
- 防火戸
- 不燃材
- 内装仕様
- 天井材
金沢市は特に内装制限を厳しく見る。
⑧ 消防設備図(消防署提出)
- 感知器の位置
- 誘導灯
- 非常照明
- 消火器
- 受信機
- 排煙設備の位置
⑨ 排煙計算書(必要に応じて)
窓の大きさ・高さ等を説明する資料。
⑩ 設備図(給排水・電気)
- 配管ルート
- 給湯器
- 排水経路
※地域によっては不要だが、金沢市では求められることもある。
⑪ 帳場(フロント)配置図
- 宿泊者名簿管理
- 受付カウンター
- 施錠管理
※無人運営の場合は別途「IT帳場」が必要。
⑫ その他付帯図面
- 建物配置図
- 外構図
- 既存建築物の台帳図
- 火災予防条例関係図
図面のボリュームに驚く方が多いですが、
旅館業許可は
“実際に人が泊まり、火事が起きても逃げられる設計”が必須 なので、
提出書類が非常に多くなるのは当然です。
◆ 第2章|図面の精度が低すぎると、審査が始まらない
旅館業許可では
「とりあえず図面を出せば審査が進む」
という考え方は完全に誤りです。
金沢市では、
正確な図面が揃わないと審査が開始されません。
図面が粗いと起こる3つの問題
① 建築指導課の用途変更審査が止まる
建築指導課は
“建物の安全性”をチェックする部署 です。
中途半端な図面では、
安全性が判断できず、再提出になる。
② 消防の事前協議が進まない
消防設備の位置が曖昧だと
- 感知器追加
- 誘導灯追加
- 排煙設備追加
など多額の工事が追加になることも。
③ 保健所の審査も止まる
衛生設備の位置がわからないため
客室面積・トイレ数の判定ができない。
図面が正確でないと、
審査が最低でも1〜3ヶ月遅れます。
◆ 第3章|金沢市で多い“図面NG”トップ10
旅館業の現場で実際に多い、
図面NGパターンをまとめました。
❌ NG1:間取り図レベルの簡易な図面を提出
ネットで作る簡易図面では絶対に通らない。
❌ NG2:寸法の記載がない
用途変更・避難計算ができません。
❌ NG3:採光面積が計算されていない
ホテル並みの採光基準を求められる。
❌ NG4:換気設備の位置が不記載
浴室・トイレ・客室すべて必要。
❌ NG5:階段幅が法定基準を満たしていない
木造住宅の階段(特に町家)は要注意。
❌ NG6:消防設備図が手書き
消防署が受け取るのは“正確な配置図”のみ。
❌ NG7:排煙設備の位置が曖昧
排煙は建築基準法でも消防でも重視。
❌ NG8:平面図と立面図に矛盾がある
窓の位置、換気位置が一致しないと即NG。
❌ NG9:防火区画が未記載
木造は特に防火措置が必須。
❌ NG10:帳場(フロント)が不明確
無人運営なら“IT帳場の仕様書”まで必要。
◆ 第4章|旅館業は“建築士+行政書士+消防設備業者”のチームで挑むのが正解
図面は建築士、
消防設備は消防設備士、
申請書類は行政書士、
現地調整は運営会社…というように、
旅館業はチーム戦です。
旅館業許可に必要な専門家
- 建築士(用途変更・図面作成)
- 行政書士(旅館業・消防・地域調整)
- 消防設備士(感知器・誘導灯工事)
- 内装業者・電気業者・水道業者
🔥 金沢市は特に「建築 × 消防」の整合性が厳しいです。
対応できる業者とネットワークを持っている行政書士に依頼するのが近道です。
◆ 第5章|旅館業の図面作成の流れ(当事務所の実務)
① 現地調査(建物の採寸・撮影)
- 窓のサイズ
- 天井高
- 階段幅
- 避難経路
- 設備の位置
現地調査が最重要。
② 建築基準法チェック
- 採光
- 換気
- 内装制限
- 防火措置
- 用途変更の必要性
③ 図面作成(建築士)
平面図・立面図・断面図・換気経路図など一式作成。
④ 消防事前協議(当事務所)
設備の追加が必要か判断。
⑤ 保健所事前相談
客室数・トイレ数などの整理。
⑥ 最終図面確定 → 申請
◆ 第6章|実例(石川県)図面NG → 当事務所が立て直したケース
事例①:Airbnbで使っていた町家が図面不備で“保健所NG”
- 無料アプリで作った図面
- 採光換気が不足
- 客室の表示が曖昧
→ 建築士による図面作成
→ 消防設備追加
→ 用途変更不要の設計に変更
→ 40日で許可取得
事例②:用途変更を出したが“消防で止まった”
- 避難経路が1方向
- 排煙設備が不足
→ 間取りを変更
→ 排煙窓を追加
→ 消防設備工事を調整
→ 許可取得
◆ 第7章|まとめ:旅館業は図面がすべて。申請の成功率は設計段階で決まる。
旅館業許可は
- 建築(用途変更)
- 消防
- 保健所
すべての要件が絡むため、
図面の精度が命 です。 - 寸法記載
- 採光換気
- 防火区画
- 避難経路
- 消防設備の位置
これらが欠けると、
許可は絶対に通りません。
◆ お問い合わせはこちら
行政書士高見裕樹事務所
〒921-8147
石川県金沢市額谷3丁目2番地 和峰ビル1階北
TEL:076-203-9314
お問い合わせフォーム:https://takami-gs.com/contact/