「更新より新規の方が楽ですか?」という質問が最も多い。
建設業許可のご相談の中で、
「新規と更新はどちらの方が大変ですか?」
という質問は非常に多くあります。
実際のところ、
“新規の方が圧倒的に大変” なのですが、
更新は更新で、別の落とし穴があります。
特に石川県(金沢市)では、
決算変更届の提出状況 や
専任技術者・経営業務管理責任者の変更有無 をシビアにチェックしており、
「更新だから簡単だろう」と油断していると、
審査が長期化したり、更新が通らない こともあります。
このページでは、
新規 vs 更新の本当の違い を、
審査実務に合わせて詳しく解説します。
◆ 第1章|新規申請が大変な理由:すべて“ゼロから証明”が必要
新規申請の審査は、特に以下の4つの要素が重くのしかかります。
① 経営業務管理責任者(経管)をゼロから証明
経管は、建設業許可の中でも難関要件。
必要なのは、
- 建設業で5年以上の「経営業務の管理責任者」の経験
- または6年以上の補佐経験
- 法人役員・個人事業主などの経歴証明
- 工事に関する契約・請求・経理の実績
など、大量の証拠資料が必要です。
在籍会社の登記、工事資料、帳簿関係が揃わないと不許可 になる典型ポイントです。
② 専任技術者(専技)の証拠書類が大量に必要
資格があればいいのですが、
実務経験で立てる場合は以下が必須。
- 工事契約書の写し
- 請求書・領収書
- 工事写真
- 給与明細・雇用契約書
- 社会保険加入履歴
- 工事日報・体制台帳など
10年分(または3年分)を揃えるのは非常に大変 です。
石川県はここを特に厳しく見ます。
③ 財産要件(500万円)の証明
- 残高証明
- 決算書
- 純資産額(資本金+利益剰余金)
のいずれかで満たす必要があります。
「500万円を用意すればいい」ではなく、
資金の出所(入金日)が不明だと疑われることもあります。
④ 会社の体制をゼロから整備する必要がある
- 事業所の写真
- 机・PC・固定電話・帳簿の保管状況
- 商号と事業所の整合性
- 実際に建設業を営む形跡があるか
かなり細かいところまでチェックされます。
◆ 第2章|更新申請が大変な理由:過去3年間の“積み重ね”を審査される
更新申請は一見楽に見えますが、
実際は 「積み重ねの整合性」 を見られるため、
こちらも油断は禁物です。
① 決算変更届を毎年出しているか
更新で最も問題になるのがこれです。
- 3年分の決算届が提出できていない
- 工事経歴書の記載が不自然
- 完工高が極端に少ない
- 税理士の決算書と工事経歴書にズレ
石川県では「決算変更届の遅延」はかなり嫌われます。
② 経管・専技が変更されていないかの確認
更新の提出前に、
- 経管が退職していた
- 専任技術者が別会社に移っていた
- 役員が変更されていた
- 社会保険の加入内容が変わっていた
など、変化があると更新で止まります。
③ 社会保険の加入状況が審査対象
ここ数年で特に厳格化。
- 雇用保険
- 厚生年金
- 健康保険
- 建設国保
加入状況に問題があると指摘されます。
④ 決算書と工事経歴書の整合性
例:
- 売上1億の会社なのに工事経歴書がゼロ
- 大工工事が売上の大半なのに建築一式のみ記載
- 元請なのに下請の書類しかない
こうしたケースは審査が長期化します。
⑤ 営業所が実態を保っているか
更新の審査でも、
「事務所としての実態」がチェックされます。
- 固定電話がない
- 帳簿が整理されていない
- 代表者が常勤していない
などもNGです。
◆ 第3章|結論:大変なのは“新規”。しかし落とし穴が多いのは“更新”。
ここまでをまとめると…
■ 新規申請が大変な理由
- 経管・専技をゼロから証明
- 証拠資料が膨大
- 社会保険加入など体制づくりが必須
- 財産要件も必要
- 営業所の実態確認が厳しい
→ 全部のハードルを“初めて”クリアする必要がある
■ 更新申請が大変な理由
- 過去3年間の積み重ねを審査される
- 決算変更届の遅れが致命傷
- 経管・専技の変更に気づいていない
- 工事経歴書と決算書がズレている
- 体制が崩れていることが多い
→「ちゃんとしている会社」は簡単だが、
「放置していた会社」は非常に難しい
◆ 第4章|新規申請のチェックリスト(当事務所基準)
【経営業務管理責任者】
□ 登記履歴が揃っている
□ 工事資料が5年分以上ある
□ 経管本人の在籍証明が取れる
【専任技術者】
□ 実務経験の証拠が10年分揃う
□ 資格証の有効性を確認
□ 業種との整合性チェック済み
【財産要件】
□ 残高証明が500万円以上
□ 資本金+利益剰余金で500万円以上
□ 入金の出所が説明可能
【営業所】
□ 固定電話あり
□ PC・帳簿・机など最低限の設備
□ 代表者・経管・専技の常勤性が取れる
◆ 第5章|更新申請のチェックリスト(当事務所基準)
【決算変更届】
□ 過去3年分が期限内に提出済み
□ 工事経歴書の整合性チェック済み
□ 税理士決算書と一致している
【経管・専技】
□ 変更なし(または変更届を済ませている)
□ 社会保険加入状況に問題ない
【営業所】
□ 代表者が常勤
□ 帳簿・経理資料が揃っている
◆ 第6章|石川県(金沢)での“よくあるNG事例”
❶ 決算変更届が3年以上放置されていた会社
更新申請に出しても受理されず、
全年度の工事経歴書・財務諸表を再作成 となることも。
❷ 経管の退職に気づかず更新できない
家族経営の会社で特に多い。
経管が65〜70歳で辞めたケースに気づかず、
更新時に要件を満たさない。
❸ 専任技術者が別会社と兼務
兼務は基本不可。
石川県は常勤性を厳しく見るため、
勤務実態が弱いと不許可になる。
❹ 決算書と工事経歴書のズレ
税理士決算書では1億売上なのに、
経歴書は2000万しか書いていないケースなど。
◆ 第7章|当事務所のサポート方針:新規も更新も“事前調整”が命です
建設業許可の審査は、
県庁とのやり取りで結果が大きく変わります。
当事務所では、全ての案件で
申請前に県庁と事前相談(事前審査)を実施 しています。
理由は3つ。
① 書類の整合性を事前にチェックできる
→ 追加書類が早めに分かる
→ 不許可リスクが激減
② 審査官の判断基準を把握できる
石川県の審査傾向は県担当者ごとに微妙に異なります。
だからこそ事前調整が重要。
③ 経管・専技の要件を確定させられる
申請後に要件が足りないと、もう挽回できません。
◆ まとめ|新規は“準備力”、更新は“継続力”がすべて
- 新規:ゼロから証明 → 準備の量が勝負
- 更新:過去の積み重ね → 整合性と継続が勝負
これが建設業許可の本質です。
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