“ここが落とし穴”|旅館業許可の物件選びと用途地域制限
1.「この物件、宿にできるの?」から始まる
旅館業・民泊の相談で最も多いのが、この質問です。
「この家を宿泊施設にできませんか?」
「不動産屋から“旅館業取れる”って言われたけど、本当でしょうか?」
残念ながら、「見た目が良くても旅館業許可が取れない物件」は少なくありません。
その理由は、建物の立地(用途地域)や構造基準に法的な制約があるためです。
この記事では、実際の現場で“落とし穴”になりやすい項目を、行政書士の視点から詳しく解説します。
2.まずは「用途地域」と「防火地域」を確認する
旅館業許可は、建物の所在地によってはそもそも営業できない場合があります。
最初に確認すべきは、都市計画法に基づく「用途地域」と「防火地域」の区分です。
● 用途地域とは?
市街地を「住宅向け」「商業向け」「工業向け」に区分したエリアのことです。
旅館業ができるのは、基本的に次の地域に限られます。
| 区分 | 旅館業可否 | 特徴 |
|---|---|---|
| 商業地域 | ○ | 宿泊・飲食・店舗が混在するエリア |
| 近隣商業地域 | ○ | 一部住宅と共存できる小規模商業地域 |
| 準住居地域 | △(要確認) | 幹線道路沿いで宿泊可の場合あり |
| 第一種住居地域 | △(簡易宿所は可の場合あり) | 住宅中心だが条件付きで可 |
| 第二種低層住居専用地域 | ✕ | 宿泊施設は不可 |
特に金沢市では、「住宅街の古民家を宿にしたい」という相談が多いですが、
第一種低層住居専用地域などでは原則として旅館業は認められません。
用途地域は、市役所の都市計画課やオンライン都市計画図で確認できます。
契約前に必ずチェックしましょう。
● 防火地域・準防火地域も要注意
古い木造住宅や町家を活用する場合、防火地域・準防火地域に該当していると、
耐火構造の要件を満たす必要があります。
内装工事の際に「防火壁」「不燃仕上げ」「自動火災報知設備」などが求められ、
想定外の改修費が発生することも。
用途地域 × 防火地域、この2つの掛け合わせを最初に確認するのが鉄則です。
3.構造上の制約にも落とし穴が
建築基準法・旅館業法上の構造基準を満たしていないと、許可は下りません。
特に次の3つは“旅館業で必ず指摘される”ポイントです。
(1)玄関帳場(フロント)の設置
旅館業法では「帳場(フロント)」の設置が原則必要です。
無人運営の場合でも、「遠隔管理システム」「モニター接続」「通話対応」などの代替措置が求められます。
帳場は建物内に設けるのが基本ですが、管理拠点を別の場所に設ける「外部帳場方式」も可能です。
ただし、その場合は所在地・連絡体制・掲示義務などが細かく規定されています。
(2)避難経路・通路幅
避難経路の確保は消防法上の重要ポイントです。
- 客室から避難口までの通路幅が一定以上あるか
- 階段の幅・踏面・手すりの有無
- 誘導灯・非常口表示が設置されているか
古民家やビルの一室利用では、構造上避難経路を確保できず不許可となる例もあります。
工事前に行政書士+消防署での現地確認を行うことが重要です。
(3)トイレ・洗面・浴室の数と配置
旅館業許可では、利用者に不便がないようトイレ・洗面所・浴室の数と動線が審査されます。
男女別が望ましく、共用の場合は清掃・換気体制の説明が求められることも。
間取りの改修を行う前に、保健所に図面を見せて確認を取るとスムーズです。
4.物件契約前に行政書士が確認すべき項目一覧
旅館業・民泊向けの物件を契約する前に、
行政書士が現地で確認すべきチェックポイントを以下にまとめます。
| 確認項目 | 内容 | 担当機関 |
|---|---|---|
| 用途地域 | 宿泊施設の営業が可能か | 市役所 都市計画課 |
| 防火地域 | 内装材・構造要件に影響 | 建築指導課・消防署 |
| 建築用途 | 旅館・寄宿舎への用途変更が必要か | 建築指導課 |
| 玄関帳場 | 設置場所・面積・動線確認 | 保健所 |
| 避難経路 | 通路幅・階段構造・誘導灯設置 | 消防署 |
| トイレ・洗面 | 衛生設備の数・換気 | 保健所 |
| 騒音対策 | 住宅地の場合の苦情防止 | 市役所・近隣対応 |
| 駐車場・出入口 | 来客動線・道路占用の有無 | 道路管理課 |
| 近隣住民対応 | 説明会実施の要否 | 市役所・町会 |
行政書士がこの項目をすべて現地・資料で確認し、
「申請可能」「要改修」「不適」と3区分で判断するのが理想です。
5.「契約してからでは遅い」典型的な失敗例
① 住宅専用地域で契約してしまった
→ 用途地域が「第一種低層住居専用地域」で、旅館業不可。解約もできず損失に。
② 消防設備の追加工事が高額に
→ 防火地域内で誘導灯・警報機・スプリンクラーが義務に。数十万円の追加費用。
③ 帳場スペースを確保できなかった
→ 図面上に帳場がなく、保健所で再設計を求められる。開業が2か月遅延。
④ 階段が狭く避難経路不適合
→ 古民家の階段幅が基準未満。避難経路の再計画が必要になり工事費増。
どれも「契約前に行政書士へ確認していれば防げた」ケースです。
6.行政書士に相談するタイミング
理想は物件契約前または設計前の段階。
行政書士が用途地域・構造・消防基準を確認し、
「この物件なら許可が取れる/この点を改修すれば通る」と明確に判断できます。
「契約してから相談」よりも、「契約前にチェック」が圧倒的に有利です。
7.行政書士高見裕樹事務所のサポート体制
◆ 豊富な現地確認実績
北陸三県で100件以上の旅館業・民泊案件を調査。
古民家、ビル、マンション、テナントなど、あらゆる構造に対応。
◆ 行政との連携・交渉も代行
保健所・消防署・市役所との事前協議を行政書士が一括代行。
現場での立会いや修正提案もその場で行います。
◆ 住民説明会・近隣対応もフルサポート
金沢市では住民説明会を求められるケースが増加中。
当事務所では案内文・式次第・議事録まで作成し、中立的に進行します。
◆ 不動産・建築との連携
「ふちどり不動産」「Kプランニング」との連携で、
物件探し〜改装〜申請までワンストップ対応。
8.行政書士が同行して確認するメリット
- 現地で即座に「許可の可能性」を判断できる
- 改修が必要な箇所を具体的に指示できる
- 建築業者・不動産業者との連携がスムーズ
- 契約時のリスクを最小限にできる
“契約の前に行政書士を現場へ”
これが旅館業許可を確実に取るための鉄則です。
9.まとめ|物件選びは「最初の一歩」がすべてを決める
旅館業許可は、建物を決めた瞬間に半分が決まります。
立地・構造・設備・地域調整——どれか一つでも誤ると、申請が進みません。
- 用途地域と防火地域をまず確認
- 構造(帳場・避難経路・トイレ)を設計段階でチェック
- 契約前に行政書士へ現地調査を依頼
この3つを守るだけで、後のトラブルをほぼ防げます。
金沢・石川で旅館業・民泊を検討中の方は、
地域実績豊富な行政書士高見裕樹事務所へぜひご相談ください。
行政書士高見裕樹事務所 事務所情報
行政書士高見裕樹事務所
〒921-8147 石川県金沢市額谷3丁目2番地 和峰ビル1階北
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旅館業許可・民泊申請・簡易宿所開業など、
物件選びから図面確認・行政調整までワンストップでサポート。
「契約前の現地確認」も承ります。