深夜酒類提供と風俗営業は併用できない!|知らずに違反になるパターン
― スナック・バー開業前に必ず押さえたい“時間と接待”の境界線 ―
1.はじめに|「夜遅くまで接客したい」だけで違反になる?
スナックやバーの開業相談で最も多い誤解が、
「風俗営業の許可を取れば、深夜まで営業できる」
というものです。
実はこれは明確に法律違反です。
風営法では、
✅ 風俗営業許可を取った店舗は、深夜0時以降に営業できない
✅ 深夜0時以降に酒類を提供するには、“接待行為なし”が前提
つまり、
「風俗営業(接待あり)」と「深夜酒類提供(深夜営業)」は併用できないのです。
この記事では、知らないうちに違反になってしまう“併用NGパターン”を中心に、
法律構造・行政実務・金沢市での運用まで詳しく解説します。
2.まず整理:3つの営業区分の違い
スナック・バーを開業する際に必要な許可は、次の3つのうちどれに該当するかで決まります。
| 区分 | 根拠法 | 概要 | 主な条件 | 管轄 |
|---|---|---|---|---|
| 飲食店営業 | 食品衛生法 | 飲食提供のための基本許可 | 厨房・衛生設備 | 保健所 |
| 風俗営業(1号) | 風営法第2条1項1号 | 接待を伴う飲食店 | 午前0時まで | 警察署(公安委員会) |
| 深夜酒類提供飲食店 | 風営法第33条 | 深夜0時以降に酒類を提供(接待なし) | 接待禁止・構造制限 | 警察署(届出) |
3.「風俗営業」と「深夜酒類提供」は目的が違う
風俗営業は「接待による歓楽的雰囲気を提供する営業」であり、
深夜酒類提供は「接待を伴わずに深夜にお酒を提供する営業」です。
両者はそもそも目的が真逆であり、法律上も別々の制度として管理されています。
| 項目 | 風俗営業 | 深夜酒類提供飲食店 |
|---|---|---|
| 営業時間 | 午前0時まで | 午前0時以降も可 |
| 接待行為 | あり | 禁止 |
| 管轄手続 | 許可(審査55日) | 届出(約10日) |
| 照度制限 | 10ルクス以上 | 20ルクス以上 |
| 用途地域制限 | 厳しい | 緩やか |
4.併用が禁止される理由
風営法では、
「接待を伴う飲食店(風俗営業)は、深夜0時から日の出まで営業してはならない」(第13条)
と定められています。
そのため、
風俗営業の許可を持っている店舗が0時を過ぎて営業すれば、
**無許可営業(深夜営業)**として処罰対象になります。
逆に、
深夜酒類提供飲食店として届出した店が「接待行為」をすれば、
無許可の風俗営業に該当します。
5.「知らずに違反」になりやすい5つのパターン
❌ パターン①:スナックで深夜2時まで営業
→ 風俗営業許可があっても0時以降はNG。
「客が帰らないから」「少しだけ延長」は完全に違反。
❌ パターン②:深夜酒類提供店でお客様の隣に座る
→ 接待行為に該当。無許可の風俗営業。
❌ パターン③:カラオケで同席して歌う
→ 「接待」と判断されるケースが多い。
❌ パターン④:バーテンダーが会話中心の営業
→ カウンター越しでも会話の程度・時間次第で接待と判断されることがある。
❌ パターン⑤:深夜営業中に女性スタッフを増員
→ 「接待目的の人員配置」として摘発されるリスクあり。
6.実際の摘発事例(北陸地方での運用)
石川県内でも、
風俗営業許可を取得したスナックが「午前1時過ぎまで営業」していたことで、
**営業停止命令(7日間)**を受けた事例があります。
また、逆に「深夜酒類提供飲食店届」を出したバーが、
女性スタッフの接客で「無許可風俗営業」と判断されたケースも。
警察は実際に見回り・抜き打ち調査を行っています。
「お客様が残っていた」「カウンター内での談笑」が証拠になることも珍しくありません。
7.“接待行為”の判断基準を正確に理解する
風営法上の「接待」とは、
“客の歓楽的雰囲気を高める行為”
を意味します。
| 行為 | 接待に該当? | 理由 |
|---|---|---|
| 客の隣に座る | 〇 | 明確な接待行為 |
| グラスに酒を注ぐ | 〇 | お酌行為 |
| カラオケ同席 | 〇 | 盛り上げ目的 |
| 会話だけ(軽い雑談) | ✕ | 一般的接客の範囲 |
| カウンター越しの提供 | ✕ | 飲食提供のみ |
“どこまでが接待か”は現場判断であり、明確な線引きが難しいため、
事前に行政書士や警察署に相談して確認することが重要です。
8.許可・届出の期間と実務フロー
| 区分 | 手続内容 | 所要期間 | 主な確認項目 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所申請 | 約1週間 | 衛生・厨房設備 |
| 風俗営業許可 | 警察署→公安委員会 | 約55日 | 図面・用途地域・照度 |
| 深夜酒類提供届出 | 警察署 | 約10日 | 営業時間・構造・照度 |
風営許可は時間がかかるため、開業スケジュールには最低2か月以上の余裕を見ておきましょう。
9.金沢市における“深夜営業”の定義
金沢市では条例により、
「午前0時から午前6時まで」を深夜時間帯と定義
しています。
そのため、午前0時を1分でも過ぎれば「深夜営業」扱いです。
バーやスナックを開業する際には、この時間設定を踏まえて計画を立てる必要があります。
10.用途地域と構造の違いにも注意
風俗営業許可は用途地域に強い制限があり、
住宅地や近隣商業地域では認められにくい傾向があります。
一方、深夜酒類提供店は比較的緩やかで、
準商業地域・近隣商業地域でも可能なケースがあります。
| 用途地域 | 風俗営業 | 深夜酒類提供 |
|---|---|---|
| 商業地域 | ○ | ○ |
| 準商業地域 | ○(条件あり) | ○ |
| 近隣商業地域 | △ | ○ |
| 第一種住居地域 | ✕ | ✕ |
11.許可・届出を間違えるとどうなる?
| ミスの内容 | 想定されるリスク |
|---|---|
| 深夜に接待を行った | 無許可営業として罰則(懲役・罰金) |
| 接待行為を隠して届出 | 虚偽申請として取消処分 |
| 風俗営業許可で深夜営業 | 営業停止・再許可が下りない |
| 時間外営業の常態化 | 常習違反として刑事告発も |
12.行政書士が行う事前調整の重要性
行政書士高見裕樹事務所では、次のような“事前調整業務”を重視しています。
| 内容 | 効果 |
|---|---|
| ✅ 警察署との事前相談 | 接待該当性を確認してトラブル回避 |
| ✅ 用途地域調査 | 許可可能エリアを確認 |
| ✅ 図面・照度測定 | 審査落ちを防止 |
| ✅ 保健所とのスケジュール調整 | 同時進行で時間短縮 |
| ✅ 実地調査立会い | 修正対応を即時実施 |
こうした事前の“すり合わせ”を行うことで、
開業スケジュールの遅延や再申請リスクを最小限に抑えられます。
13.実例:知らずに違反→再申請になったケース
金沢市内でスナックを経営していたB様。
風俗営業許可を取得後、午前2時まで営業を続けていたところ、
近隣からの通報をきっかけに警察が立入調査。
深夜営業違反として7日間の営業停止処分を受けました。
その後、営業時間を短縮し、ルールを遵守して再スタート。
“知らなかった”では済まないという実例です。
14.費用の目安とサポート体制
| 手続区分 | 行政書士報酬(税・実費別) | 備考 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 33,000円~ | 保健所申請 |
| 深夜酒類提供飲食店届出 | 110,000円~ | 図面作成・届出含む |
| 風俗営業許可申請 | 150,000円~ | 図面・警察協議・立会含む |
| 事前調査(単独) | 33,000円~ | 用途地域・構造確認 |
15.まとめ|“接待”と“深夜営業”は絶対に両立しない
風俗営業許可と深夜酒類提供届出は、どちらか一方のみしか選べません。
✅ 接待行為がある → 風俗営業許可(午前0時まで)
✅ 深夜0時以降営業 → 深夜酒類提供飲食店届出(接待禁止)
知らずに両方の要件を満たしてしまうと、無許可営業として処罰対象になります。
営業スタイルを決める前に、必ず行政書士に相談し、
「どちらの許可が必要か」を明確にしておくことが成功の第一歩です。
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