
【宅建業免許 × 法人化】
“個人から法人へ”|宅建業の法人化と免許切替の手続き
■ はじめに
「これまで個人で不動産業をしてきたけれど、会社にしたい」
「宅建業免許はあるけれど、法人化したら引き継げるの?」
「法人化するにはどんな手続きが必要なのか?」
このようなご相談を、行政書士高見裕樹事務所には多くいただきます。
不動産業界では、ある程度の取引規模になると、法人化による信頼性の向上や節税効果を目的として会社化を検討する方が増えます。
しかし実は、個人の宅建業免許を法人にそのまま引き継ぐことはできません。
この記事では、個人から法人へスムーズに移行するためのポイント、
宅建業免許の取り直し手続き、法人設立との同時進行のコツまで、石川県での実務を踏まえて詳しく解説します。
■ 1. 宅建業免許は「個人」と「法人」で別の扱い
まず押さえておくべき重要な前提があります。
それは、宅建業免許は「事業主体」に発行される免許であるということです。
区分 | 主体 | 免許の有効範囲 |
---|---|---|
個人免許 | 個人事業主(あなた本人) | あなた個人が行う不動産業 |
法人免許 | 会社(法人格) | 会社として行う不動産業 |
このため、
個人事業主が法人化しても、同じ「宅建業者」として免許を引き継ぐことはできません。
法人を新設する場合は、新たに法人名義で宅建業免許を申請する必要があります。
この点を理解せず、法人名で営業を始めてしまうと、**「無免許営業(宅建業法第12条違反)」**に該当する可能性があるため注意が必要です。
■ 2. 「引き継げる」と誤解されやすい理由
よくある誤解の背景には、以下のような事情があります。
- 代表者が同じだから「引き継げる」と思い込む
- 法人登記と事業内容が同じだから継続扱いになると思う
- 銀行や業者票の名義を変更するだけで済むと勘違いしている
しかし、個人と法人は法律上まったくの別人格です。
たとえ代表者が同一人物でも、法人化の時点で事業主体が変わるため、「免許の承継」は認められません。
この誤解によって、法人設立後にトラブルが起こるケースが少なくありません。
とくに「法人名で契約書を作成してしまった」「広告を法人名義に変えた」などは、すべて違法行為となる恐れがあります。
■ 3. 個人事業主が法人化する主な理由
宅建業の法人化には、多くのメリットがあります。
主な理由を整理すると以下の通りです。
① 信頼性・取引拡大
法人登記されていることで、金融機関・取引業者・オーナーなどからの信用が向上します。
② 節税効果
法人は経費計上や役員報酬の設定など、税務上の自由度が高く、所得税率よりも低い法人税率が適用されることもあります。
③ 従業員雇用・社会保険加入
法人になることで従業員の雇用や社会保険制度を整備しやすくなります。
④ 事業承継・資金調達
法人化することで、事業の引継ぎ・売却・融資申請がスムーズになります。
■ 4. 法人化の際に最も注意すべき「免許切替」
法人化を進める上で最も重要なのが、
「個人免許の廃止」と「法人免許の新規取得」をスムーズに接続することです。
両者の間に期間が空くと、その間は宅建業として営業できません。
営業停止状態にならないよう、次のようなスケジュールを意識しましょう。
■ 5. 法人化の手続きスケジュール(モデルケース)
ステップ | 内容 | 期間の目安 |
---|---|---|
① 会社設立(登記完了) | 定款に「宅地建物取引業」を明記 | 約2週間 |
② 宅建業免許申請(法人) | 登記完了後すぐ申請 | 約1〜2か月 |
③ 法人免許交付 | 石川県庁から交付通知 | 約40〜60日後 |
④ 個人免許廃止届提出 | 法人免許交付後すぐ提出 | 同時期 |
この流れで進めれば、営業停止期間を最小限に抑えることが可能です。
■ 6. 法人化に必要な書類一覧
法人として宅建業免許を取得する際の主な書類は以下の通りです。
書類名 | 内容 |
---|---|
宅地建物取引業免許申請書 | 法人情報・代表者・専任取引士等を記載 |
登記事項証明書 | 設立登記完了後の履歴事項全部証明書 |
定款 | 「宅地建物取引業」を事業目的に含める |
役員の略歴書・誓約書 | 全役員分を提出 |
専任取引士資格証の写し | 常勤専任者の資格を証明 |
事務所案内図・内部写真 | デスク・電話・掲示物等の配置を確認 |
使用承諾書または賃貸契約書 | 事務所の使用権限を証明 |
身分証明書・登記されていないことの証明書 | 各役員分 |
納税証明書 | 法人および役員の分を提出する場合あり |
これらの書類を整えることで、審査がスムーズになります。
■ 7. 定款の目的欄の記載例
定款に「宅地建物取引業」が含まれていないと免許が下りません。
定款の目的欄には、以下のように記載します。
(目的)
1. 宅地建物取引業
2. 不動産の賃貸、管理、売買及び仲介
3. 前各号に附帯関連する一切の業務
目的の記載が不足していると、定款変更からやり直しになるため要注意です。
■ 8. 専任の宅地建物取引士の配置要件
法人として宅建業を行う場合も、営業所ごとに専任の宅地建物取引士を1名以上配置する必要があります。
専任性の条件
- 他社勤務・兼業不可(常勤であること)
- 雇用契約・社会保険などで勤務実態が確認できること
- 宅建士証番号と登録都道府県を明示すること
代表者本人が宅建士の場合は、自ら専任者となることも可能です。
■ 9. 事務所要件の整備も忘れずに
宅建業免許の審査では、「営業所の実態」が重要視されます。
審査で確認されるポイント
- 独立したスペースが確保されているか
- 机・椅子・電話・書類棚が設置されているか
- 他の会社との兼用でないか
- 標識(宅地建物取引業者票)の掲示予定があるか
「登記上の住所」と「実際の営業所」が異なる場合は、現地確認で不備と判断されるケースもあります。
■ 10. 法人免許の有効期間と更新
法人の宅建業免許も有効期間は5年間です。
更新時には、以下の内容を再度審査されます。
- 専任取引士の常勤性
- 事務所要件の維持
- 役員の変更状況
- 宅建業法違反の有無
個人時代の免許年数は通算されません。
法人としての実績を新たに積み上げることになります。
■ 11. 個人免許廃止の手続き
法人免許の交付後、個人事業の宅建業免許は必ず廃止届を提出します。
必要書類は以下の通りです。
- 廃業届出書
- 個人免許証の原本
- 宅建業者票の返納
- 専任取引士の変更届(該当する場合)
提出先は石川県庁・土木部住宅課(知事免許の場合)です。
■ 12. 費用と期間の目安(石川県の場合)
項目 | 内容 |
---|---|
登録免許税 | 33,000円(知事免許)/90,000円(大臣免許) |
行政書士報酬 | 約110,000円〜165,000円(内容による) |
申請期間 | 約40日〜60日 |
有効期間 | 5年間 |
法人設立の登記費用や定款認証費用は別途必要となります。
■ 13. 行政書士に依頼するメリット
(1)会社設立+免許申請を一括で対応
法人登記・定款確認・宅建業免許申請をワンストップで進行可能。
スケジュール管理もお任せいただけます。
(2)審査落ち・差戻しを防止
石川県での実務経験をもとに、最新様式・チェックポイントを反映。
「図面が足りない」「専任者証明不足」といった差戻しを防ぎます。
(3)登記後の更新・支店追加にも対応
法人免許取得後の変更届・更新申請・支店追加なども継続サポート。
(4)事務所整備から開業まで支援
ふちどり不動産・株式会社Kプランニングと連携し、
物件探し→事務所改装→標識設置までトータルで対応できます。
■ 14. よくある質問Q&A
Q1. 個人免許が残っていても法人で営業できますか?
→ できません。法人としての免許が下りるまで営業は不可です。
Q2. 法人設立前に免許申請はできますか?
→ できません。登記完了後に申請可能です。
Q3. 法人免許を取るとき、専任者は個人免許時と同じで良い?
→ 問題ありませんが、常勤証明書類が再度必要です。
Q4. 個人免許の更新時期と法人化が重なったら?
→ 法人化を優先し、個人免許の廃止→法人新規申請の順で進めます。
■ 15. 法人化のメリットと注意点まとめ
メリット | 注意点 |
---|---|
信用力アップ | 法人免許は個人免許を引き継げない |
節税・経営安定 | 目的欄に「宅建業」の記載が必須 |
採用・雇用拡大 | 専任取引士の常勤性を確認 |
融資・補助金活用 | 事務所要件・設備を整える必要あり |
■ 16. 法人化の全体スケジュール(まとめ)
- 法人設立登記(約2週間)
- 宅建業免許申請(約1〜2か月)
- 免許交付 → 個人廃止届(同時期)
合計で約2〜3か月を見込むとスムーズです。
■ 17. 行政書士高見裕樹事務所なら
行政書士高見裕樹事務所では、
石川県内の宅建業者様の法人化・新規免許申請・更新をトータルでサポートしています。
- 法人化に伴う免許切替
- 定款確認・事務所調査
- 専任取引士・役員要件チェック
- 法人設立+宅建業免許申請の同時進行
また、不動産会社「ふちどり不動産」とリフォーム会社「Kプランニング」との連携により、
物件探し・事務所改装・標識設置までワンストップで対応可能です。
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行政書士高見裕樹事務所
TEL:076-203-9314
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