
“店前に看板やテラスを置きたい”は要注意|道路使用許可と占用許可の実務
1. 店舗前スペースを活用したい人が増えている背景
飲食店や美容室を経営する際、
- 店舗前に立て看板を出したい
- テラス席を作って開放感を演出したい
- メニュー表や装飾を歩道に置きたい
と考える方は少なくありません。
特にコロナ禍以降は「オープンエアで安心感を与えたい」「集客のために視認性を高めたい」という理由で、歩道や道路を活用したいニーズが増えています。
しかし、公道(道路)は誰のものでもなく、国や自治体の管理下にある公共物です。
無断で使用すると「道路交通法違反」や「道路法違反」に問われることもあり、最悪の場合は撤去命令や罰則を受けることになります。
そこで必要になるのが、道路使用許可と道路占用許可です。
2. 道路使用許可と道路占用許可の違い
一見似ている2つの制度ですが、所管法令も管轄も異なります。
道路使用許可(道路交通法)
- 管轄:警察署(公安委員会)
- 根拠:道路交通法第77条
- 内容:通行や交通に影響を与える行為をする際に必要
- 例:祭りでの屋台出店、工事による車線規制、イベントでの一時的な利用
道路占用許可(道路法)
- 管轄:道路管理者(国土交通省・県・市町村)
- 根拠:道路法第32条
- 内容:継続的に道路を独占的に使用する際に必要
- 例:電柱・水道管・看板・歩道に設置するテラス席
つまり、
- 一時的な利用 → 道路使用許可
- 継続的な設置 → 道路占用許可
と理解するとわかりやすいです。
3. 店舗運営で必要になる典型例
(1) 看板を店前に置きたい場合
- 歩道上に置く場合は道路占用許可が必要
- 看板の大きさや設置位置に制限あり
- 無許可で設置すると撤去命令+罰則の対象に
(2) テラス席を設けたい場合
- 歩道を使って椅子やテーブルを設置するには道路占用許可
- 併せて消防法・建築基準法にも配慮が必要
- 通行の妨げにならないかが審査のポイント
(3) 期間限定のイベント出店
- 夏祭り・マルシェなど一時的な利用 → 道路使用許可(警察)
- イベント主催者がまとめて申請するケースも多い
4. 許可を取らずに使うリスク
実際に「小さな看板くらいなら大丈夫だろう」と思って無断で置いている店舗もあります。
しかし、無許可で道路を使うと次のようなリスクがあります。
- 道路交通法違反 → 罰則(3か月以下の懲役または5万円以下の罰金)
- 道路法違反 → 占用物件の撤去命令+罰金
- 周辺住民や通行人からの苦情で行政指導を受ける
- 事故発生時の損害賠償リスク
店舗イメージを守るためにも、正しく手続きを踏んでおくことが重要です。
5. 許可取得の流れ
道路占用許可(店舗前の看板・テラス席など)
- 管轄の市町村役場や県の土木事務所に相談
- 設置計画図・位置図を提出
- 管理者による審査
- 占用料の納付(年額)
- 許可証交付 → 設置可能
道路使用許可(一時利用)
- 所轄警察署に申請書を提出(行為予定日の5日前程度)
- 設置計画・交通規制図の提出
- 許可証交付 → イベント当日に利用可能
6. 実際の相談事例
事例①:カフェの立て看板
金沢市のカフェオーナーが歩道に立て看板を設置したいと相談。
道路占用許可を取得し、サイズを規定内に収めることで正式に設置可能に。
事例②:美容室のテラス活用
白山市の美容室が、カット待ち用にベンチを歩道に設置したいと希望。
占用許可+通行人の安全確保の条件付きで許可を得て実現。
7. 行政書士に依頼するメリット
- 道路使用と占用、どちらが必要かを判断できる
- 申請書・図面の作成を代行
- 警察署・市町村との調整をスムーズに進められる
- 飲食店営業許可や風俗営業許可など、店舗運営に必要な他の許認可もワンストップで対応可能
8. まとめ
- 店舗前に看板やテラスを置く場合は、道路使用許可・道路占用許可が必要
- 無断設置は撤去や罰則のリスクがある
- 一時利用は「道路使用」、継続利用は「道路占用」
- 専門家に依頼すればスムーズに手続き可能
「ちょっとした看板くらい」と思わず、事前にきちんと手続きを取ることが、店舗運営の安心につながります。
✅お問い合わせ
店舗運営での道路使用許可・道路占用許可のご相談は「行政書士高見裕樹事務所」へ。
👉 お問い合わせフォーム:https://takami-gs.com/contact/
👉 電話:076-203-9314